天文暦を利用して歴史を叙述する

 さらに地図や手記などの一次史料を重ねるとまるでその場で見てきたかのような情景が書ける。あくまで創作だがかなり真実に近いと思っている。

 ダンモア卿は植民地総会がヴァージニアの人々を煽動して武装蜂起させようとしていると警戒を強めていた。何とか対抗策を講じなければならない。そこでダンモア卿はジェームズ川に浮かぶ軍船のマグダレン号からヘンリ・コリンズ大尉を秘かに呼ぶことにした。ダンモア卿はいったい何を画策しているのか。
 4月15日夜のことである。マグダレン号からひとつまたひとつと人影が川岸に降り立った。その数は全部で16人であった 。満月に煌々と照らされた姿を見ると、それは水兵達であった。そして、人影に加えて何か大きな影がある。荷馬車だとおぼろげながら分かる。荷馬車はダンモア卿から手配するように命じられたものである。一隊の目的地はウィリアムズバーグであった。コリンズは荷馬車の軋む音を気にしているようであった。それに水兵達も人目を気にするように周囲を窺っている。どうやら彼らはウィリアムズバーグの住民に姿を見られたくないらしい。そのまま一隊は総督官邸の裏にある木立の中に身を隠した。
 それから5日経った深夜、コリンズが水兵達を従えて再び姿を現した。なぜ5日間も木立の中に隠れていたのか。月が欠けるのを待っていたからである。満月は秘密の任務を遂行するには具合が悪い。水兵達はどこに向かおうとしているのか。総督官邸からまるで緑の帯のように南に向かって公園が延びている。その両脇を2本の道路がグロースター公爵大通りに向けて走っている。彼らが選択したのは東側の道であった。黙って進軍を続ける一隊の行く手には、黒々とした木立が並んでいる。暫く行くと煉瓦造りの広壮な屋敷に差し掛かった。夜更けで寝静まっているせいか何も物音もせず灯りも漏れていない。水兵達もわざわざ家人を起こすような真似はしなかった。

 続きが気になる人は・・・・・おそらくいないだろうな。歴史の教科書で注記にすら載らないような事件だから。