忘れられた本『パーシーの逸話集』

 『パーシーの逸話集』全20巻。1821年から1823年に刊行。欧米の歴史的逸話が大量に集められている。仮に逸話が創作としても尋常な量じゃない。でも知っている限りアメリカに関する話を読むと矛盾が見当たらない。1次史料もふんだんに引用されている。中にはどうやって手に入れたのかと思うものもあるけど。ちなみに日本に関する話も1つだけ含まれている(決闘の作法)。相当、欧米の歴史に精通している人間じゃないとちんぷんかんぷんの内容。それなりに面白く書かれてはいるけどね。でも知らない人物がこれでもかこれでもかと登場する。どのような内容か少し紹介すると例えばジョージ3世の生活。何かの記録を引用している。これは分かりやすい。

「国王一家は朝6時に起床して、それから2時間、彼ら自身の時間を楽しむ。8時、王太子、オスナバーグの司祭、王女、ウィリアム王子、エドワード王子がキュー[ロンドン西郊]にあるそれぞれの邸宅から両親と朝食を摂るためにやって来る。9時、年少の子供達がたどたどしい口調で笑いながら朝の挨拶をする。5人の年長者はそれぞれの用事に取り掛かる一方で幼い子供達は扶育者に付き添われてリッチモンド庭園で午前中を過ごす。国王と王妃は子供達が食事しているのを眺めてよく楽しんでいた。週に1度、すべての子供達が連れ立ってリッチモンド庭園に楽しい小旅行をした。午後、王妃は忙しく働き、国王は何かを王妃に読んで聞かせる。[中略]。夕方、すべての子供達はベッドに入る前にキュー宮殿にやって来て挨拶する。そして、同じ事が毎日繰り返される。運動、新鮮な空気、そして、軽い食事が国王の健康法であり活力の源である。陛下は主に野菜を食べワインはほとんど呑まない。王妃は多くの市井の淑女に言わせれば非常に禁欲的である。珍味佳肴が並べられているテーブルから彼女は最も普通の皿を選んで、しかも1回の食事に2つ以上のものを滅多に食べることはない」

 こういう調子で欧米諸国の様々な人物を古代からその当時まで縦横無尽に登場させている。