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アメリカ歴史旅IXに続いてフィラデルフィア。独立戦争当時、最大の都市であり、大陸会議が置かれた。星条旗誕生の地として有名なベツィ・ロス邸、ジェームズ・マディソン邸、サミュエル・ポーウェル邸(フィラデルフィア市長でワシントンの友人)、トマス・ジェファソンの下宿など。
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ベツィ・ロス邸 |
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ベツィ・ロス邸正面 |
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ベツィ・ロス邸を訪問したワシントン |
『アメリカ人の物語』から抜粋
フィラデルフィアの街中に一軒の小さな家具店がある。女主人のベツィ・ロスが子供たちに囲まれながら縫い物をしていると数人の紳士たちが店内に入って来た。その中の1人は、亡夫の叔父であるジョージ・ロスである。さらに馴染みのワシントンの顔もある。ワシントンはベツィのお得意さんであり、しばしばシャツの刺繍を頼みに来ていた。
紳士たちは、新しい国旗を制定するために助言を求めに来たとベツィに告げる。とりあえずベツィは紳士たちを応接間に案内する。紳士たちはしばらくそこで話し合う。
話し合いが終わると、ワシントンはポケットから折り畳まれたスケッチを取り出してベツィに見せる。そのスケッチには、13の赤と白の横縞と13の六芒星が描かれていた。
「このような旗を作れるだろうか」
「できるかどうかはわかりませんが、とにかくやってみます。作ったことはありませんが、もし見せられた通りの模様であれば、作れると思います」
それからベツィは、いくつかの点についてデザインの変更を求める。ワシントンは、鉛筆を取り出してスケッチに描かれたデザインを変更する。デザインにどのような変更が加えられたかはわからないが、ベツィが六芒星を五芒星に変えるように提案したことは確かである。その提案にワシントンは旗を作るのが難しくなるのではと懸念を示す。するとベツィは、「とても簡単ですよ」と言って、鋏で器用に五芒星を切り出して見せた。結局、星は五芒星になった。
ベツィ・ロスと星条旗誕生の逸話だが、根拠が疑わしいとする歴史家も多い。少なくとも1777年になるまで大陸会議が星条旗の制定について議論した痕跡がないからだ。またワシントンもこの件について何も言及していない。
たとえ史実でなかったとしても、ベツィ・ロスという名前がアメリカ人にとって建国神話の重要な一部分となっていることは間違いない。その名前が人びとの心の中で生き続けていることが大切である。今でもベツィ・ロスの家を訪ねる者は後を絶たない。
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ジェームズ・マディソン邸 |
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銘板 |
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フィラデルフィア市長のサミュエル・ポーウェルの家 |
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銘板 |
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ジェファソンが下宿していた家 |
アメリカ歴史旅XIに続く。