ボストン茶会事件で自由の息子たちはモホーク族の装束を身に纏って紅茶を海に投げ込んだ。なぜわざわざモホーク族の装束を身にまとったのか。当局の追及を避けるという意味もあったが、他の意味もあった。
実はモホーク族がイギリス本国を訪れて大きな話題になったことがあった。イギリスの文人たちの間でモホーク族は理想の「自然人」の象徴として扱われるようになった。そして、モホーク族が書いたという触れ込みで政治風刺を展開した。そうした政治風刺は有名な雑誌に掲載されていたのでアメリカ人も読む機会があった。
ボストン茶会事件の当事者たちもそうしたモホーク族のイメージを借りて自分たちの政治的不満を表明した。それは自由の息子達が作った歌にはっきりと示されている。
モホーク族よ、斧を手に結集するのだ
そして、ジョージ王に宣告しよう
あんたが飲む外国産のお茶にわれらの税金など払わぬぞ、と。
やつの威嚇はこけおどし。
われらの娘や妻に無理やり
やつの穢らわしい紅茶を飲ませようとは!
だからものども、急ぎ集まれ
グリーンドラゴンでわれらの族長たちと顔合わせだ!
われらのワレン博士も、勇者リヴィアもいる
ものごとなす手と、励ましの言葉で
自由と法を掴み取るぞ。
わが邦の”勇敢”で屈強の守り手たちが
自由のために戦うのを
真のノースエンド魂はけっして見殺しにすまい!
だからものども、急ぎ集まれ
グリーンドラゴンでわれらの族長と顔合わせだ。
『アメリカ建国とイロコイ民主制』より引用。『アメリカ建国とイロコイ民主制』は、イロコイ六部族連合が白人の到来よりも先に独自に編み出していた「憲法」や思想がどのように西洋思想やアメリカ建国の理念に影響を及ぼしたのか論述した画期的な本。