ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説18―Guns And Ships 和訳

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BURR:

How does a ragtag volunteer army in need of a shower Somehow defeat a global superpower? How do we emerge victorious from the quagmire? Leave the battlefield waving Betsy Ross’ flag higher? Yo. Turns out we have a secret weapon! An immigrant you know and love who’s unafraid to step in! He’s constantly confusin’ confoundin’ the British henchmen. Ev’ryone give it up for America’s favorite fighting Frenchman!

「ろくにシャワーを浴びていないようなぼろぼろの志願兵たちがどうすれば超大国に勝てるのか。我々はこの泥沼からどのように勝利できるのか。ベツィ・ロスの旗を戦場に高く掲げておくことができるのか。我々には秘密兵器があるぞ。君達がご存知の愛すべき大胆不敵な外国人。彼はイギリス人の軍団を絶えず混乱させている。アメリカ人の最もお気に入りの戦うフランス人のために誰もが道を譲る」


解説:「ベツィ・ロスの旗」とは星条旗のこと。星条旗の誕生をめぐってワシントンがフィラデルフィアにあるベツィ・ロスという未亡人の家具店を訪問し、自ら鉛筆で加筆したスケッチを渡して新しい国旗、つまり星条旗を作るように依頼したという話がある。それは、1870年にペンシルヴェニアの歴史愛好家協会に子孫が「合衆国旗の歴史」という表題の下でおこなった証言に基づいている。


COMPANY:

Lafayette!

「ラファイエット」


LAFAYETTE:

I’m takin this horse by the reins makin’ redcoats redder with bloodstains.

「私はこの馬の手綱をつかみながら赤服ども[イギリス兵]を血でもっと赤くしてやったぞ」


COMPANY:

Lafayette!

「ラファイエット」


LAFAYETTE:

And I’m never gonna stop until I make ‘em drop, burn ‘em up and scatter their remains, I’m—

「残りの奴らをやっつけてぶっ飛ばしてばらばらにするまで私は決して立ち止まらないぞ」


COMPANY:

Lafayette!

「ラファイエット」


LAFAYETTE:

Watch me engagin’ em! Escapin’ em! Enragin’ em! I’m—

「見よ、奴らと戦う私を。奴らを敗走させろ。奴らをきりきり舞いさせろ。私は・・・」


COMPANY:

Lafayette!

「ラファイエット」


LAFAYETTE:

I go to France for more funds.

「私はもっと軍資金を集めるためにフランスに帰っていた」


解説:米仏同盟が成立した後、ラファイエットは一時帰国してアメリカに対する支援を取り付けようと奔走していた。そして、ヨークタウンの戦いが始まる前にアメリカに戻って南部戦線で一隊を率いて奮戦した。その成果は後のヨークタウンの勝利に繋がった。


COMPANY:

Lafayette!

「ラファイエット」


LAFAYETTE:

I come back with more

「私はたくさんの軍資金を集めて戻ってきた」


解説:実はフランスによる資金援助の背景にはローレンスの貢献がある。『アメリカ人の物語』から抜粋。


フランスから支援を取り付けるという使命を胸に抱いたローレンスは無事に大西洋を越えてパリに到着していた。外相のヴェルジェンヌ伯爵カール・グラヴィエから歓待を受けたものの、具体的な支援についてはなかなか話が進まない。交渉を申し入れてもヴェルジェンヌはさまざまな遁辞を構えて取り合おうとしない。

親友のハミルトンにくれぐれも慎重に行動するように言い含められていたローレンスであったが、もともと直情径行な性格である。先行きが見通せない状況に加えて、事あるごとにアメリカを下風に見ようとするヴェルジェンヌに苛立ちを募らせる。ローレンスの考えでは、アメリカはフランスと対等でなければならないからだ。

ヴェルジェンヌからすればそうしたローレンスの態度は増上慢以外の何ものでもない。そこでヴェルジェンヌは、フランスがアメリカに「恩恵」を施していることを何度も強調した。それを聞いたローレンスの顔に怒りの色が浮かぶ。

「伯爵、恩恵とおっしゃいましたか。私はわが国を愛しているのでそんな言葉は受け入れられません」

南部でも戦いが日増しに激しくなりつつあると聞いていたローレンスは焦燥感を深めていた。故郷のサウス・カロライナを守るために戦いたいという熱望を抑えられない。ここで時間を浪費しているわけにはいかない。そこでローレンスは賭けに出ることにする。国王に直訴するのだ。  

パリに駐在していたフランクリンは、それを聞いて何とか思い止まらせようとする。しかし、ローレンスの決意を変えることはできなかった。困り果てたフランクリンは、自分は責任を負うつもりはないが自由にやってみるとよいと折れた。  

国王に会える機会は謁見式しかない。謁見式に出席したローレンスは、突然、立ち上がった。そして、驚く式部官を尻目に国王ルイ16世に歩み寄る。そして、軍資金の支援を求める文書を奉呈しながら言上する。

 「もし私が求めている恩恵が拒まれたり遅らされたりすれば、祖国の自由を守るために私の剣は抜かれることなく終わるでしょう。そして、私はイギリス臣民としてフランス国王に剣をふるうことになるでしょう」

ローレンスの言葉は、国王に対する不敬である。しかし、心優しく生真面目な性格のルイ16世はローレンスを咎めるどころか、ヴェルジェンヌに早急に軍資金を準備せよと命じる。ローレンスの果断な行動のおかげでアメリカに軍資金がもたらされた。その額は総計600万リーヴル(180億円相当)である。独立戦争でフランスがアメリカに供与した総額は2,500万リーヴル(750億円相当)にのぼる。


LAFAYETTE AND ENSEMBLE:

Guns And ships And so the balance shifts.

「大砲と軍艦で天秤は[アメリカに有利に]動いた」


WASHINGTON:

We rendezvous with Rochambeau, consolidate their gifts.

「我々はロシャンボーと合流してフランスの贈り物を有効活用しよう」


解説:ロシャンボーはフランス遠征軍を率いて到着した総司令官。ワシントンと協力してヨークタウンの勝利をもたらした。


LAFAYETTE:

We can end this war at Yorktown, cut them off at sea, but For this to succeed, there is someone else we need.

「我々はヨークタウンでこの戦争を終わらせることができる。奴らを海から遮断すれば。しかし、それをうまくやり遂げるには必要な人物がいる」


解説:ヨークタウンは北をヨーク川、南をジェームズ川、東を海に囲まれた半島にあり、制海権を奪われ西側を塞がれれば逃れられない場所にあった。


WASHINGTON:

I know.

「もちろん私は知っているぞ」


WASHINGTON AND COMPANY:

Hamilton!

「ハミルトン」


LAFAYETTE:

Sir, he knows what to do in a trench. Ingenuitive and fluent in French, I mean—

「彼は塹壕でどうすべきかよくわかっている。フランス語にも流暢な彼は・・・」


WASHINGTON AND COMPANY:

Hamilton!

「ハミルトン」


LAFAYETTE:

Sir, you’re gonna have to use him eventually. What’s he gonna do on the bench? I mean—

「やはり彼を起用しなければ。彼がベンチに座っていても何ができるのか。彼は・・・」


解説:実際のところ、ラファイエットは10号堡塁への攻撃に別の人物を指揮官に任命しようとしていた。しかし、ハミルトンがワシントンに直訴したために急遽、ハミルトンに指揮官の任が下りた。


WASHINGTON AND COMPANY:

Hamilton!

「ハミルトン」


LAFAYETTE:

No one has more resilience, Or matches my practical tactical brilliance.

「彼よりも打たれ強さを持っている者はいないし、私の卓越した戦術に匹敵する者もいない」


WASHINGTON AND COMPANY:

Hamilton!

「ハミルトン」


LAFAYETTE:

You wanna fight for your land back?

「あなたの土地を取り戻すために戦いたいか」


COMPANY:

Hamilton!

「ハミルトン」


WASHINGTON:

I need my right hand man back!

「私の右腕に戻って来てほしい」


解説:独立戦争末期、ハミルトンはワシントンの副官ではなく主に連合会議の一員として活動していた。政治制度の改革においてハミルトンは急進的であり、穏健なワシントンと見解を違えていた。


LAFAYETTE:

Ah! Uh, get yah right hand man back. You know you gotta get ya right hand man back. I mean you gotta put  some thought into the letter but the sooner the better to get your right hand man back.

「ああ、あなたの右腕に戻って来てもらわなければ。きっとあなたの右腕は戻って来ます。あなたがちょっとした手紙を送れば、きっとすぐにあなたの右腕は戻って来るでしょう」


WOMEN:

Hamilton! Hamilton! Hamilton! Hamilton Hamilton Ha-ha!

「ハミルトン、ハミルトン、ハミルトン、ハミルトン、ハミルトン」


MEN:

Get your right hand man back! Your right hand man back! Hamilton! Ha-ha-! Hamilton Hamilton Ha-ha!

「あなたの右腕に戻ってもらいましょう。あなたの右腕に戻ってもらいましょう。ハミルトン、ハミルトン」


WASHINGTON:

Alexander Hamilton, Troops are waiting in the field for you. If you join us right now, together we can turn the tide. Oh, Alexander Hamilton, I have soldiers that will yield for you. If we manage to get this right They’ll surrender by early light. The world will never be the same, Alexander…

「アレグザンダー・ハミルトン、兵士達が戦場で君を待っている。もし君が今すぐに我々のもとに馳せ参じれば、我々は戦況をひっくり返せる。ああアレグザンダー・ハミルトン、私は君に託すための兵士達をとっておいた。もし我々がすぐに取り掛かれば、奴らは昼までに降伏するだろう。世界はもう決して同じではなくなる、アレグザンダー・・・」


ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説19―History Has Its Eyes On You 和訳

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