原文&和訳のみ解説なし⇒ミュージカル『ハミルトン』Schuyler Defeated 和訳
Eliza enters. Philip Hamilton enters with a newspaper.
PHILLIP:
Look! Grampa’s in the paper! “War hero Philip Schuyler loses Senate seat to young upstart Aaron Burr!” Grampa just lost his seat in the Senate.
「見てよ。おじいちゃんが新聞に載っているよ。『戦争の英雄フィリップ・スカイラーが若手のアーロン・バーに上院議席を奪われる』。おじいちゃんは上院の議席を失ったんだ」
解説:連邦の官職と州の官職を兼ねることを禁じる法律が1790年に制定されたにもかかわらず、スカイラーはニュー・ヨーク州人事院に出席し続けてクリントン州知事による官職任命を拒み続けた。クリントン州知事はニュー・ヨーク州憲法批准会議以来、ハミルトンの強力な政敵であった。クリントン州知事はスカイラーの代わりにバーをニュー・ヨーク州選出上院議員に据えることにした。1791年1月19日、クリントンの策謀の結果、ニュー・ヨーク州議会はバーを上院議員に選出した。この当時、連邦上院議員は州議会によって選ばれていた。
ELIZA:
Sometimes that’s how it goes.
「時にはどうしようもないことがあるわよ」
PHILLIP:
Daddy’s gonna find out any minute.
「お父さんはすぐに知りたいんじゃないかな」
ELIZA:
I’m sure he already knows.
「きっとお父さんは知っているわよ」
PHILLIP:
Further down.
「それから」
PHILLIP, ELIZA:
Further down.
「それから」
PHILLIP:
"Let’s meet the newest senator from New York..."
「『新しいニュー・ヨーク州選出上院議員に会おう・・・』」
ELIZA:
New York—
「ニュー・ヨーク・・・」
PHILLIP, ELIZA:
Our senator!...
「我々の上院議員・・・」
Hamilton storms up to Burr. The cabinet forms around them.
HAMILTON:
Burr! Since when are you a Democratic-Republican?
「バー、いつから君は民主共和派になったのかい」
BURR:
Since being one put me on the up and up again.
「民主共和派になれば私はまた上り調子さ」
HAMILTON:
No one knows who you are or what you do.
「君が何者で君が何をしているのか誰も知らないぞ」
BURR:
They don’t need to know me. They don’t like you.
「彼らが私のことを知る必要はないさ。ただ彼らは君のことを好きじゃない」
解説:クリントン州知事を中心とする一派は、スカイラーを引きずり下ろしてハミルトンの鼻を明かすためにバーを担ぎ出したと言える。クリントン州知事はジェファソンとマディソンと連携して民主共和派を形成した。ニュー・ヨークで民主共和派が勢力を伸ばした結果、後の1800年の大統領選挙でハミルトンを中心とする連邦派は敗れることになる。
HAMILTON:
Excuse me?
「どういうことだ」
BURR:
Oh, Wall Street thinks you’re great. You’ll always be adored by the things you create But upstate,
「ああ、金融街の奴らは君のことをありがたいと思っているさ。君が作り上げたもののおかげで君はずっと尊重されるだろうよ。しかし、ニュー・ヨーク州北部では・・・」
解説:もともとニュー・ヨーク州内部では地域によって政治的差異が大きかった。合衆国憲法批准をめぐってもニュー・ヨーク・シティを中心とする南部は憲法批准に賛成したのに対して、北部では反対勢力が強かった。憲法成立後もそれは続き、南部では連邦派の勢力が強く、北部では民主共和派の勢力が強かった。
HAMILTON:
Wait.
「なんだと」
BURR:
People think you’re crooked! And Schuyler’s seat was up for grabs, so I took it.
「人々は君のことを不正な奴だと思っているのさ。スカイラーの議席は早い者勝ちだったのさ。それで私がいただいたというわけだ」
HAMILTON:
I’ve always considered you a friend.
「私は君のことをずっと友達だと思っていた」
BURR:
I don’t see why that has to end!
「友情にも終わりがあるのだと思わないかな」
HAMILTON:
You changed parties to run against my father-in-law.
「君は私の義父に対抗して出馬するために鞍替えした」
BURR:
I changed parties to seize the opportunity I saw. I swear, your pride will be the death of us all! Beware, it goeth before the fall...
「見つけた機会をものにするために私は鞍替えした。君の傲慢さは我々すべてをきっとだめにしていたはずだ。用心しろよ、傲慢さは失敗のもと・・・」
解説:ハミルトンとバーの仲はこの時から悪化し始める。スカイラーは、バーが首謀者になって議席を奪われたとハミルトンに伝えている。ニュー・ヨーク政界の内紛を利用してバーは中央政界へ足を踏み入れた。
⇒ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説31―Cabinet Battle #2 和訳
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