ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説32―Washington On Your Side 和訳

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BURR:

It must be nice, it must be nice to have Washington on your side. It must be nice, it must be nice to have Washington on your side.

「それがいい。ワシントンを味方につけるのがいい。ワシントンを味方につけるのがいい」


JEFFERSON:

Ev’ry action has its equal, opposite reaction. Thanks to Hamilton, our cabinet’s fractured into factions. Try not to crack under the stress, we’re breaking down like fractions. We smack each other in the press, and we don’t print retractions. I get no satisfaction witnessing his fits of passion. The way he primps and preens and dresses like the pits of fashion. Our poorest citizens, our farmers, live ration to ration. As Wall Street robs ‘em blind in search of chips to cash in. This prick is askin’ for someone to bring him to task. Somebody gimme some dirt on this vacuous mass so we can at last unmask him. I’ll pull the trigger on him, someone load the gun and cock it. While we were all watching he got Washington in his pocket.

「あらゆる作用はそれに反発する同じ作用を生む。ハミルトンに感謝しよう。我々の閣僚が党派に割れてしまったことを。圧力でばらばらにならないようにしながら我々は分数のように綺麗に割れている。我々は新聞で互いに攻撃しあっているが、いちいち非難の取り消しを公表したりしない。奴の激情を見ても私は満足できないね。奴の着こなしはひどい趣味だ。我が哀れなる市民と農夫は糊口をしのいでいる。金融街は無知な彼らからお金を搾り取ろうとしている。この下劣な計画では、誰かが奴に仕事をやらせようとしている。奴の面の皮を剥がせるように、この空虚な連中に投げつける汚物を誰かが私にくれたらなあ。もし誰かが銃を装填して撃鉄を起こしてくれたら私が奴に向かって引き金を引くだろう。我々が監視していたのに奴はワシントンを籠絡してしまった」


解説:ミランダは「ジェファソンはおそらくハミルトンの敵であるが、彼は間違っていなかった。ハミルトンの計画は公債を撃ってしまった退役軍人を寒空の下に置き去りにして、政府が公債を額面通りの値段で買い戻すことを知った者たち[投機家]の言うままにする」と書いている。

ジェファソンはハミルトンと対立していたが、自分は表に出ず、マディソンにハミルトンを攻撃させていた。ハミルトンの公債償還計画は、ジェファソンとマディソンにとって一般庶民を犠牲にして投機家を肥え太らせるための陰謀に他ならなかった。独立戦争中に連合会議(連邦議会の前にあった中央政府)は、退役軍人の報酬の大部分や物資の代金を公債で支払っていた。もし公債が償還されなければ、退役軍人や物資を売った者は一銭も受け取れない。そこで公債を投機家に安値で売り払ってしまった。投機家が公債を買い入れたのはハミルトンの公債償還計画の実現を当て込んだからである。もし計画が実現すれば公債は値上がりするので儲けられる。それをジェファソンとマディソンは、投機家が一般庶民を犠牲にしたのだと攻撃した。ただハミルトンは、投機家もリスクを負って公債を買い集めたのだから当然、報酬を得るべきだと反駁している。公債償還計画に関してワシントンは表立って意見を表明しなかったが、おおむねハミルトンの計画を支持していた。


JEFFERSON, BURR:

It must be nice, it must be nice to have Washington on your side. It must be nice, it must be nice to have Washington on your side. Look back at the Bill of Rights.

「それがいい。ワシントンを味方につけるのがいい。それがいい。ワシントンを味方につけるのがいい。権利章典を見てみよう」


Madison enters.


MADISON:

Which I wrote.

「私が権利章典を書いた」


解説:権利章典は合衆国憲法制定に反対していた人々をなだめるためにマディソンによって起草され成立した。


JEFFERSON, MADISON, BURR:

The ink hasn’t dried. It must be nice, it must be nice to have Washington on your side.

「[権利章典の]インクが乾かぬうちに。それがいい。ワシントンを味方につけるのがいい」


MADISON:

So he’s doubled the size of the government. Wasn’t the trouble with much of our previous government size?

「奴は政府の規模を二倍にした。以前の政府の規模では問題があったのか」


BURR:

Look in his eyes!

「奴の目を見よ」


JEFFERSON:

See how he lies.

「奴がどうやって嘘をつくか見よ」


MADISON:

Follow the scent of his enterprise

「奴の企ての手がかりを追おう」


JEFFERSON:

Centralizing national credit. And making American credit competitive.

「公債を一元化する。そして、アメリカの信用を高める」


解説:ハミルトンは連邦政府の借金と各州政府の借金を一元化して、公債償還の方法を明示してアメリカの信用を高めた。ただそれはジェファソンとマディソンからすれば、連邦政府の権限を危険なまでに拡大する企てにほかならなかった。


MADISON:

If we don’t stop it we aid and abet it.

「もし我々がそれを阻止できなければ黙認することになる」


JEFFERSON:

I have to resign.

「私は負けを認めなければならなくなる」


MADISON:

Somebody has to stand up for the South!

「誰か南部のために立ち上がってくれないか」


解説:ハミルトンの公債償還計画は、南部の農民を犠牲にして北部の投機家を利する計画であると考えられた。それは南部を北部に従属させるものだという反感があった。


BURR:

Somebody has to stand up to his mouth!

「誰かが奴の口を塞がなければ」


解説:連邦派の主流から外れたバーはニュー・ヨーク政界でハミルトンの反対派を集めてジェファソンとマディソンに協力する。


JEFFERSON:

If there’s a fire you’re trying to douse,

「もし火を消そうとするなら」


MADISON, JEFFERSON:

You can’t put it out from inside the house.

「家の中から火を消すことはできない」


JEFFERSON:

I’m in the cabinet I am complicit in Watching him grabbin’ at power and kiss it. If Washington isn’t gon’ listen To disciplined dissidents, this is the difference. This kid is out!

「私は閣内にいる。奴が権力を簒奪しようとして諦めるところを一緒に見てやろう。もしワシントンがしつけのよい反対派の言うことに耳を傾けようとしないならわけが違うな。奴にご退場願おう」


MADISON, BURR, JEFFERSON:

Oh! This immigrant isn’t somebody we chose. Oh! This immigrant’s keeping us all on our toes. Oh! Let’s show these Federalists who they’re up against! Oh!

「ああ、この移民[ハミルトン]は我々が選んだ者ではない。ああこの移民は我々すべてに不断の警戒を強いる。ああ、誰を敵に回そうとしているか連邦派に教えてやろう」


JEFFERSON, MADISON:

Southern motherfuckin’—

「南部の卑しい」


JEFFERSON, MADISON, BURR:

Democratic-Republicans!

「民主共和派」


解説:もともと「民主共和派」は蔑称である。当時、Democraticは「衆愚的」といった意味であまり良い意味ではなかった。したがって、Democratic-Republicansという呼び方は連邦派によるものだったが、しだいに民主共和派自身が用いるようになった。


JEFFERSON, MADISON, BURR, ENSEMBLE:

Oh!

「ああ」


JEFFERSON, MADISON, BURR:

Let’s follow the money and see where it goes.

「お金がどこに行くかたどってみよう」


ENSEMBLE:

Oh!

「ああ」


JEFFERSON, MADISON, BURR:

Because every second the Treasury grows.

「財務省はずっと肥大し続けるから」


解説:当時、財務省は最大の官庁であり、最も多くの連邦職員を擁していた。


ENSEMBLE:

Oh!

「ああ」


JEFFERSON, MADISON, BURR:

If we follow the money and see where it leads. Get in the weeds, look for the seeds of Hamilton’s misdeeds.

「もしお金がどこに行くかたどれば。雑草の中からハミルトンの悪行の種を探せる」


JEFFERSON, MADISON, BURR:

It must be nice. It must be nice.

「それがいい。それがいい」


MADISON:

Follow the money and see where it goes.

「お金がどこに行くかたどってみよう」


JEFFERSON, MADISON, BURR:

It must be nice. It must be nice.

「それがいい。それがいい」


JEFFERSON:

The emperor has no clothes.

「まさに裸の王様」


JEFFERSON, MADISON, BURR:

We won’t be invisible. We won’t be denied. Still. It must be nice, it must be nice to have Washington on your side.

「我々は見えないわけじゃない。我々は知らないと言われたいわけではない。それでも。それがいい。ワシントンを味方につけるといい」


ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説33―One Last Time 和訳

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