ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説39―Burn 和訳

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Eliza sits with a lantern and a stack of letters.


ELIZA:

I saved every letter you wrote me. From the moment I read them I knew you were mine. You said you were mine. I thought were mine. 

「私はあなたからもらった手紙をすべて保存しているの。手紙を読むとあなたが私のものだと実感できるからよ。あなたはあなたが私のものだと言ったわ。私もそう思っていたわ」


ELIZA:

Do you know what Angelica said When we saw your first letter arrive? She said, "Be careful with that one, love. He will do what it takes to survive." 

「あなたの最初の手紙が届いた時、アンジェリカが何と言ったと思いますか。彼女は『その人に気をつけなさいよ、あなた。彼はどんな手でも使ってくるわ』と言ったのよ」


ELIZA:

You and your words flooded my senses. Your sentences left me defenseless. You built me palaces out of paragraphs, You built cathedrals. I'm re-reading the letters you wrote me. I'm searching and scanning for answers In every line, For some kind of sign And when you were mine The world seemed to Burn. Burn.

「あなたとあなたの言葉で私の心はいっぱいになったの。あなたの文章は私をどうしようもない気持ちにさせたの。あなたは文章から私のために宮殿や大聖堂を作った。私はあなたがくれた手紙を何度も読んでいる。あらゆる言葉に答えを探すの。何かの徴候を探すの。あなたが私のものなら世界に火が灯るのよ。火が灯るの」


ELIZA:

You published the letters she wrote you. You told the whole world how you brought this girl into our bed. In clearing your name, you have ruined our lives. 

「あなたは彼女があなたに書いた手紙を公開したわ。あなたはこの女をどうやってベッドに連れ込んだのか全世界に伝えたわ。あなたの嫌疑を晴らすためにあなたは我々の生活を台無しにしたのよ」


解説:ハミルトンが「レノルズ・パンフレット」の公表についてイライザに事前に相談したかは不明だが、その性質上、相談はしなかったのではないと考えられる。なぜなら「レノルズ・パンフレット」はイライザが第六子を生むまで発行が延期されているからだ。妻の健康を気遣っての措置だと言える。

マリア・レノルズの手紙はパンフレットに補遺として付け加えられている。なぜハミルトンがわざわざマリアの手紙まで公開する必要があったのか。それはハミルトンに対する攻撃の発端となった『1796年のアメリカの歴史』において、マリアとの文通が不正投機について連絡を取り合うためだと指摘されていたからである。ハミルトンは不正投機の嫌疑を晴らすためにマリアの手紙を公開して、それが不倫の証拠にすぎないと断言する必要があった。「レノルズ・パンフレット」でハミルトンは以下のように書いている。

この告白は赤面せずにできるような告白ではない。激しい情熱によって私は罪を犯したのでいかなる悪徳も弁解できない。私の感謝、真心、そして、愛をすべて捧げる者の胸中に課される心痛について私が自責の念に駆られずにすむことはない。しかし、その者はきっと認めてくれるだろう。たとえ大きな犠牲を払おうとも私は、私の名誉に投げかけられる深刻な汚辱を晴らすべきだと。その者も慈愛とでも言うべき崇高な心で大切にしている。きっと人民もこの告白を認めてくれるはずだと私は信じている。さらに憎むべき非難に対して弁明するために告白が必要だったので、私はこうした不道徳による苦痛から免れられる。


ELIZA:

Do you know what Angelica said When she read what you'd done? She said, "You have married an Icarus. He has flown too close to the sun."

「あなたがしたことを読んだ時、アンジェリカが何と言っているのか知っているかな。彼女は『あなたはイカロスと結婚したのよ。彼はあまりに太陽に近づきすぎたの』と言ったのよ」


解説:イカロスはギリシア神話に登場するアテネの名匠ダイダロスの子。父とともに蝋付けの翼でクレタ島から脱出したが太陽に接近しすぎて蝋が溶けて翼がもげて墜落死したという。チャーナウの『ハミルトン伝』の第30章は「Flying too Near the Sun」となっている。


ELIZA:

You and your words obsessed with your legacy Your sentences border on senseless And you are paranoid in every paragraph How they perceive you?

You, you, you...

「あなたとあなたの言葉は、あなたの後世の名声について回るのよ。あなたの文章は狂気すれすれよ。それに文章のどこを見てもあなたはおかしいわ。彼らはあなたのことがわかるのかしら。ねえあなた・・・」


ELIZA:

I'm erasing myself from the narrative. Let future historians wonder How Eliza reacted When you broke her heart. You have torn it all apart. I'm watching it Burn. Watching it burn. The world has no right to my heart. The world has no place in our bed. They don't get to know what I said. I'm burning the memories, Burning the letters that might have redeemed you. You forfeit all rights to my heart. You forfeit the place in our bed. You'll sleep in your office instead, With only the memories Of when you were mine. I hope that you burn.

「私はこのことについて関わらないようにしましょう。あなたが私の心を打ち砕いた時に私がどう反応したのか未来の歴史家に知らせずにおくわ。あなたはすべてをめちゃくちゃにしたのよ。私は火が灯っているのを見ていることにします。火が灯っているのを見ています。世界には私の心を明るくする火はないの。私達のベッドには世界が入る余地なんてないのよ。私が何と言ったのか彼らには教えないわ。記憶を焼いてしまうの。あなたの名誉を回復する手紙を焼いてしまうの。あなたは私の心を明るくする火を奪ってしまった。あなたは我々のベッドがあるべき場所を失った。その代りにあなたは事務所で寝てね。あなたが私のものだという記憶だけを抱きながら。うんざりするといいわ」


解説:レノルズ事件に関してイライザの怒りの矛先は、ハミルトンではなくモンローに向けられている。モンローがハミルトンから聞いた情報をわざと漏洩した結果、事件が起きたと信じていたからである。


ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説40―Blow Us All Away 和訳

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