ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説44―Your Obedient Servant 和訳

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BURR:

How does Hamilton, An arrogant, Immigrant, orphan, Bastard, whoreson Somehow endorse Thomas Jefferson, his enemy, A man he’s despised since the beginning, Just to keep me from winning? I wanna be in the room where it happens—

「横柄な移民、孤児、私生児、売女の息子であるハミルトンが敵であり、最初から軽蔑していたトマス・ジェファソンを応援して私の勝利を邪魔するとはどういうことだ。それが起きる部屋に私はいたい・・・」


解説:1—Alexander Hamiltonと対になっている。

「神の思し召しでカリブ海の忘れられた島で生まれ落ち、貧しくむさ苦しかった私生児、孤児、売女とスコットランド人の息子が英雄でお偉方になろうとは」

29—The Room Where It Happensと対になっている。自分も日の当たる場所に出たいというバーの野望が示されている。

「それが起きる部屋に私はいたい。それが起きる部屋に。それが起きる部屋に私はいたい。それが起きる部屋に。それが起きる部屋に私はいたい。私は私はそれが起きる部屋にいたい。ああ、ああ、そうできたら。そうできたら。まさにその大きく古い部屋にいられるようになりたい。いられるようになりたい」


BURR, COMPANY:

The room where it happens. The room where it happens.

「それが起きる部屋に私はいたい。それが起きる部屋に私はいたい」


BURR:

You’ve kept me from—

「君は私を・・・」


BURR, COMPANY:

The room where it happens.

「それが起きる部屋から締め出している」


BURR:

For the last time.

「もうこれで終わりだ」


Burr begins to write a letter.

Dear Alexander: I am slow to anger, But I toe the line As I reckon with the effects Of your life on mine. I look back on where I failed, And in every place I checked, The only common thread has been your disrespect. Now you call me “amoral,” A “dangerous disgrace,” If you’ve got something to say, Name a time and place, Face to face. I have the honor to be Your Obedient Servant, A dot Burr.

「親愛なるアレグザンダー、私は怒りっぽくはないが、これまでの人生における君と私の関係を考えると我慢の限界だ。失敗を振り返ってすべてを入念に確認した。いつもいつも君にあるのは軽蔑だ。今、君は私を『不道徳な』とか『危険な面汚し』と呼ぶ。もし君が何か言うことがあるなら対面できる時間と場所を指定してほしい。敬具、A・バー」


解説:「Your Obedient Servant」は文字通り訳すと「あなたの忠実な下僕」になるが、これは当時の手紙によく使われた結びの言葉である。例えばワシントンが生前、ハミルトンに最後に送った手紙にも「Your most Obedt Servt」と記されている。


Hamilton writes a letter in response.


HAMILTON:

Mr. Vice President, I am not the reason no one trusts you. No one knows what you believe. I will not equivocate on my opinion, I have always worn it on my sleeve. Even if I said what you think I said, You would need to cite a more specific grievance. Here’s an itemized list of thirty years of disagreements.

「副大統領閣下、あなたが誰からも信用されないのは私のせいではない。誰もあなたが何を信じているかわからない。私は自分の見解をごまかさない。私はいつも自分の見解に忠実だ。君が私の語ったことだと思っていることをたとえ私が言っても、君はもっとはっきり不満の種を言わないといけない。ここに箇条書きにした30年分の不和の一覧表がある」


BURR:

Sweet Jesus.

「そいつはけっこうだ」


HAMILTON:

Hey, I have not been shy I am just a guy in the public eye Tryin’ to do my best for our republic. I don’t wanna fight. But I won’t apologize for doing what’s right. I have the honor to be Your Obedient Servant, A dot Ham.

「私は気後れすることはないが、公衆の面前ではただの男にすぎず、我が共和国のために最善を尽くしているだけだ。私は戦いたくない。しかし、正しいことをしたのに謝りたくはない。敬具、A・ハミルトン」


解説:独立戦争の頃からアメリカでは上流階級たる者、特に軍職の経験を持つ者であれば、名誉が傷つけられた場合、決闘を挑むのが当然だと考えられていた。もちろんワシントンのように決闘を愚かな行為だと考えて生涯にわたって一度も決闘に関わっていないような人物もいる。しかし、そうした例は軍部では稀であった。ハミルトンもバーも軍職の経験を持つ。そして、将来、有事の際に軍を率いることになれば、決闘を忌避したという評判は致命的な汚点となり得た。特にハミルトンのような実力で上流階級にのし上がった者は慎重に名誉を守る必要があった。そして、紳士の体面を守るためには法廷ではなく決闘場で名誉を守らなければならなかった。ただフィリップが決闘で命を落とした後、ハミルトンは決闘に関して否定的になっていたが、バーが抱いている激しい憎悪を解決するためには決闘しかないと決意した。

バーはなぜそれほどまでにハミルトンを憎むようになったのか。まず嫉視である。独立戦争の頃、ハミルトンはワシントンの副官として働き、後にワシントン政権で財務長官として働くきっかけを得た。その一方でバーはワシントンの下で働こうとしたがそりが合わなかった。その結果、バーはハミルトンのように政権の中枢を占めることができなかった。そして、1800年の大統領選挙で大統領の椅子を奪おうと画策したバーをハミルトンが阻止した。副大統領になったバーであったが、ジェファソンとの関係はすぐに破綻して1804年の大統領選挙では副大統領から外されることになった。そこでバーはニュー・ヨーク州知事選挙に出馬したが惨敗した。惨敗した本当の原因はジェファソンがニュー・ヨークの民主共和派にバーを応援しないように支持したことである。しかし、バーはハミルトンが画策したとしてさらに憎悪を募らせた。こうした根深い嫉視と憎悪は簡単に解消されるようなものではなかった。


BURR:

Careful how you proceed, good man. Intemperate indeed, good man. Answer for the accusations I lay at your feet or prepare to bleed, good man.

「何を言っているのか気をつけたほうがいいぞ、おまえさん。ちょっとやりすぎだぞ、おまえさん。私が言いがかりへの答えを突き返すか、それとも流血の準備をするかだよ、おまえさん」


HAMILTON:

Burr, your grievance is legitimate. I stand by what I said, every bit of it. You stand only for yourself. It’s what you do. I can’t apologize because it’s true.

「バー、君の不満はもっともだ。私は自分が言ったことを絶対に譲らないつもりだ。君は君自身のためにしか動かない。それが君のやっていることだ。それが真実だから私は謝ろうとは思わない」


BURR:

Then stand, Alexander. Weehawken. Dawn. Guns. Drawn.

「では行こう、アレグザンダー・ウィホーケンへ。夜明けに。銃を持って。そして、抜け」


HAMILTON:

You’re on.

「よしわかった」


BURR, HAMILTON:

I have the honor to be your obedient servant,

「敬具」


HAMILTON:

A dot Ham.

「A・ハミルトン」


BURR:

A dot Burr.

「A・バー」


ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説45―Best of Wives and Best of Women 和訳

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