ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説21―What Comes Next 和訳

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We see King George, glum.


KING GEORGE:

They say, The price of my war's not a price that they're willing to pay. Insane. You cheat with the French, now I'm fighting with France and with Spain. I'm so blue, I thought that we'd made an arrangement when you went away, You were mine to subdue. Well, even despite our estrangement, I've got a small query for you: What comes next? You've been freed. Do you know how hard it is to lead? You're on your own. Awesome. Wow. Do you have a clue what happens now? Oceans rise. Empires fall. It's much harder when it's all your call. All alone, across the sea. When your people say they hate you, don't come crawling back to me. Da da da dat da dat da da da Da yada Da da dat Da da ya da...You're on your own...

「彼らは言う。朕の戦争による代償は、彼らが喜んで払える代償ではないと。 まともじゃないね。君達がフランスをたぶらかしたせいで朕は今、フランスとスペインと戦うはめになっている。朕はとても憂鬱だ。そなたらが行ってしまおうとするから何かと便宜を図ってやったのに。そなたらは私のものだから従うべきだったんだ。まあ我々は別離することになったが、そなたらにちょっと聞きたいことがある。さあ次はどうする。そなたらは解放された。それがどれだけ大変なことになるのかわかっているか。そなたらはそなたらの道を進もうとしている。驚くばかり。すごいね。今、何が起きているかちょっとでもわかっているかな。海が盛り上がり諸帝国が滅びる。そなたらに試練が降り掛かればもっと大変になるぞ。ずっと独りで海を渡ることになる。人民がそなたらを嫌いだと言うようになったら、平伏しても朕のもとに戻れるとは思うなよ。そなたらはそなたらの道を進むのだ」


解説:史実ではアメリカの独立を認める時にジョージ3世はどのようなことを言ったのか。『アメリカ人の物語』から抜粋する。


1782年12月5日、イギリスに渡っていたエルケイナ・ワトソンは、フェラーズ伯爵ロバート・シャーリーの紹介でイギリス議会を傍聴する機会を得た。その日、ジョージ3世がアメリカの独立を認める演説をおこなうと聞きつけたからだ。

議場の入り口でフェラーズは、「できる限り国王の近くに行きなさい。恐れることは何もありません」とワトソンに囁いた。そこでワトソンは遠慮なく国王の正面に席を占めた。隣を見ると、ハウ提督が座っていた。

その日は暗く厚い霧に覆われた日であった。菱形に切った硝子が鉛製の窓枠に嵌まっていて重厚な雰囲気を醸し出している。壁には、イギリス海軍がスペインの無敵艦隊を撃破する様子が描かれたタペストリーが掛けられている。

開場から二時間が経過して号砲の轟きで国王の出御が告知される。ジョージ3世は、王座の左側にある小さな扉から入って来た。そして、すぐに着席すると足置きに右足を乗せてポケットから急いで演説の草稿を取り出した。議会が招集され、議員たちが入場する。

喧噪が静まるとすぐに国王は演説を始めた。いくつか話題を述べた後、演説は遂に最も重要な部分に差しかかった。

「北アメリカ大陸に対するさらなる攻勢を禁止するのに必要な命令を出すのに私は時間を無駄にしません。私はいつもそうであるように、議会と臣民の意向だと考えられることは何でも採用するつもりです。ヨーロッパ、そして、北アメリカに関する私のすべての措置と見解は、植民地と完全に和解することが目的です。この目的を達成するために必要不可欠なことがあれば、私は躊躇せずに私に与えられたすべての権限を行使します」 

ここでジョージ3世は演説を少し中断した。議場が暗くて草稿の文字が読み取りにくかったのか、それとも自分の感情を抑えきれなかったのかは誰にもわからない。しばらくして演説が再開される。

 「植民地が自由で独立した国家であることを宣告します。したがって、王権のもとにある諸王国からの分離を認め、私自身のすべて考えを犠牲にして臣民の希望と意見に従います。帝国の分割から生じる悪影響をイギリスが受けないように、そして、[清教徒革命後の王政復古で]わが国ですでに証明されたように、君主の存在は憲法のもとで保障された自由にとって不可欠だと悟る不幸からアメリカが解放されるように、私は全能の神に真摯に祈ります。宗教、言語、国益、そして、愛着が両国の恒久的な連帯の絆となることを私は願います」 

議場に響くジョージ3世の声を聞いていたワトソンは、沸き上がる思いを抑えられなかった。頑迷な国王の心も遂に折れた。今、目の前で、国王自身の言葉によってアメリカ独立の達成が宣言された。それはワトソンにとって「人類全体の運命に大きな影響を及ぼす」可能性がある出来事であった。


ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説22―Dear Theodosia 和訳

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