ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説24―Non-Stop 和訳

原文&和訳のみ解説なし⇒ミュージカル『ハミルトン』Non-Stop 和訳


BURR:

After the war I went back to New York.

「戦争後、私はニュー・ヨークに戻った」


HAMILTON:

A-after the war I went back to New York.

「戦争後、私はニュー・ヨークに戻った」


BURR:

I finished up my studies and I practiced law.

「私は法学の勉強を終えて弁護士を開業した」


HAMILTON:

I practiced law, Burr worked next door.

「私は弁護士を開業した。バーがお隣さんだ」


解説:ミランダは「彼らは実際に同じ頃に同じ近隣で弁護士を開業した」と述べている。


BURR:

Even though we started at the very same time, Alexander Hamilton began to climb. How to account for his rise to the top? Maaaaan, the man is non-stop.

「たとえ同時に始めたとしてもアレグザンダー・ハミルトンはのし上がり始める。彼がどんどん上り詰めるのをどう説明すればいいのか。ああ、決して止まらない男だ」


ENSEMBLE: 

Non-stop!

「決して止まらない」


HAMILTON:

Gentlemen of the jury, I’m curious, bear with me. Are you aware that we’re making hist’ry? This is the first murder trial of our brand-new nation.

「陪審員のみなさん、私はわくわくしています。我々が歴史を作ろうとしているとおわかりか。我々の新しい国の最初の殺人事件です」


BURR, ENSEMBLE:

Non-stop!

「決して止まらない」


HAMILTON: 

The liberty behind deliberation— I intend to prove beyond a shadow of a doubt With my assistant counsel—

「自由が無視されようとしています。私はそれを明らかにしようと思います。私の補佐役の弁護士と・・・」


BURR:

Co-counsel. Hamilton, sit down. Our client Levi Weeks is innocent. Call your first witness. That’s all you had to say!

「相談役だ。ハミルトン、座れ。我々の依頼主リーヴァイ・ウィークスは無実だ。1人目の目撃者を呼べ。君が言うべきことはそれで全部だ」


解説:ミランダの注釈によれば、この事件が起きた時期は史実とは異なるが、「彼らの戦後の生活を紹介するのに完全な方法」である。リーヴァイ・ウィークス事件が裁判にかけられたのは1800年のことであり、ハミルトンはバーとともにウィークスの弁護団に加わって無罪を勝ち取った。


HAMILTON: 

Okay! One more thing—

「よし。さてさて」


BURR: 

Why do you assume you’re the smartest in the room? Why do you assume you’re the smartest in the room? Why do you assume you’re the smartest in the room? Soon that attitude May be your doom!

「どうして君がここで一番賢いと思えるんだ。どうして君がここで一番賢いと思えるんだ。どうして君がここで一番賢いと思えるんだ。そんな態度をしているとすぐに破滅するぞ」


ENSEMBLE:

Awwww!

「あああ」


BURR: 

Why do you write like you’re running out of time? Write day and night like you’re running out of time? Ev’ry day you fight, like you’re running out of time. Keep on fighting. In the meantime—

「なぜ君はまるで時間がないかのように一心不乱に書くのか。昼も夜もまるで時間がないかのように書くのか。毎日、まるで時間がないかのように戦うのか。戦い続けている。ところで・・・」


ENSEMBLE:

Why do you write like you’re running out of time? Ev’ry day you fight, like you’re running out of time. Non-stop!

「なぜ君はまるで時間がないかのように一心不乱に書くのか。昼も夜もまるで時間がないかのように書くのか。毎日、まるで時間がないかのように戦うのか。決して止まらない」


HAMILTON:

Corruption’s such an old song that we can sing along in harmony And nowhere is it stronger than in Albany

This colony’s economy’s increasingly stalling and Honestly, that’s why public service seems be calling me.

「腐敗は誰もがうまく歌える古い歌のようなものさ。オールバニー以上に腐敗がひどいところはどこにもない。この植民地の経済は急速に失速している。だからこそ私は公務で尽力したいと思っている」


解説:ミランダは「これはいつも真実だ。今日、新聞を読んでみればあなたはもっとひどい腐敗を読めるはずだ。オールバニーには政治腐敗博物館もある。博物館だ」と言っている。


BURR AND ENSEMBLE:

He's just Non-stop!

「彼は決して止まらない」


HAMILTON:

I practiced the law, I practic’ly perfected it I’ve seen injustice in the world and I’ve corrected it Now for a strong central democracy, If not then I’ll be Socrates

「私は弁護士業に勤しみ、うまくやっている。世界の不公正を見つけたら私が正している。今こそ強力な中央政府を伴った民主政体が必要だ。もしそれが無理なら私はソクラテスになろう」


解説:古代ギリシアの賢人ソクラテスは国家に迎合して信念を曲げることを潔しとせず毒殺刑に処せられた。ハミルトンも信念を貫く覚悟を示している。


HAMILTON:

Throwing verbal rocks at these mediocrities. 

「ぼんくらどもに言葉の塊をぶつけてやるぞ」


ENSEMBLE:

Awww!

「あああ」


BURR:

Hamilton, at the Constitutional Convention

「ハミルトン、憲法制定会議」


解説:1787年、憲法制定会議はフィラデルフィアで開催された。当時の言い方では単に「フィラデルフィア会議」である。もともとフィラデルフィア会議は、連合規約(合衆国憲法の前に存在した連邦の基本法)を改正するために召集された。しかし、連合規約の改正だけでは国事多難に対応できないと考えた代表達は新たに憲法を制定することにした。それが合衆国憲法である。


HAMILTON:

I was chosen for the Constitutional Convention.

「私は憲法制定会議の代表に選ばれた」


解説:ハミルトンは憲法制定会議の前座になったアナポリス会議で中心的な役割を果たしている。憲法制定会議を開催するという構想は、独立戦争が終結する以前からハミルトンの脳裏にあった。その証拠に、1782年7月21日、ハミルトンの働き掛けでニュー・ヨーク邦議会は、「連邦を再生させ修正する特別な権限を持った諸邦の全体会議」の開催を求める決議を採択している。そして、フィラデルフィア会議の開催が決定した後、ハミルトンはニュー・ヨーク邦の3人の代表の中の1人に選ばれた。他の代表の2人はハミルトンと異なって強力な中央政府に警戒感を持っていた。


BURR:

There as a New York junior delegate:

「ニュー・ヨークの年少の代表として出席した」


解説:憲法制定会議に参加したハミルトンについて代表の1人は次のように記録している。

「ハミルトン大佐は当然のことながら彼の才能で高名である。彼は法律家であり、完成された学者として名が通っている。彼は明晰で強靱な判断力と創造力の光彩を結び付けている。さらに彼の説得力があり魅力がある雄弁は、心身ともに彼に同調させることができる。しかし、言葉の調子に似合わず、彼の声には少し弱々しいところがある。彼は人の心を燃え立たせる雄弁家ではなく、むしろ説得力を持つ演説であるというのが私の意見である。ハミルトン大佐は、考える時間を必要とする。徹底的な調査を行うという哲学に従って、彼は問題のあらゆる部分を検討する。そして、彼が前に進み出る時、彼の頭の中は興味深い物事で満たされている。問題の表面の上っ面だけを撫でるということはなく、彼は礎を見るために底まで潜る。彼の言葉は必ずしも平静ではないが、時にボリングブルック の言葉のように教訓的であり、[ローレンス・]スターンの言葉のように軽快である。彼の弁舌は蔑ろにできる程、穏やかなものではないが、彼は注目を集めるためにのべつ幕なく喋っている。彼はおよそ33歳であり、体格は小さく痩せている。彼の作法は堅苦しいが、時に不快なくらいに虚栄心が強くなる」


HAMILTON:

Now what I’m going to say may sound indelicate…

「今、私が言おうとしていることはどうもうまくいきそうに・・・」


COMPANY:

Awwww!

「あああ」


BURR:

Goes and proposes his own form of government! His own plan for a new form of government!

「さあ行って自分が考える政体を提案しろ。新しい政体案だ」


COMPANY:

What? What?

「どんな、どんな」


BURR:

Talks for six hours! The convention is listless!

「6時間も話し続けたそうだ。憲法制定会議も大儀なことだな」


解説:1787年6月18日、ハミルトンは5時間に及ぶ演説を行った。その日のマディソンの記録には、ハミルトンに関する説明が書かれている。概ね淡々と事実を述べることを徹底しているマディソンが感想めいたことを書いているのは非常に珍しい。どうやらハミルトンの活躍に期待していたようだ。

「ハミルトン氏は、能力、年齢、そして、経験で優っている他者への敬意から彼らの考えと異なる自分の考えを示すことに躊躇していただけではなく、自邦[ニュー・ヨーク]に関する複雑な状況から同僚が示す意見に決して同意することができなかったので、これまで議事に関して会議の前で沈黙を保ってきた。しかしながら、我々に危機が差し迫るにあたって、公共の安全と幸福のために全力を尽くすというすべての人間に課される義務の真摯な遂行に躊躇することは許されなくなった。したがって、ハミルトン氏は、自分が両案を支持していないことを告げなければならなかった。ハミルトン氏は特にニュー・ジャージー案に反対して、諸邦に主権の保持を認めるような連合規約の修正は、その目的を決して実現することはできないと確信していた」

その日はまさにハミルトンの独壇場だった。ハミルトンの演説は議事妨害のための長広舌ではない。憲法の理念について真摯に語った密度の濃い演説である。質量ともにこれだけ優れた精緻な演説ができる政治家はなかなかいない。しかも、どうやらハミルトンは概要をまとめた草稿しか準備していなかったようだ。幸いにもマディソンを中心に何人かの代表達が記録を残しているのでここに再現できる。

「ヴァージニア案は、連邦的な考えから逸脱するも案だと理解されている。なぜならそれは、すなわち個人に働き掛けるからである。この緊急事態において我々は我が国の幸福に不可欠だと見なすことを何でもしなければならない義務を負っているというランドルフ氏の意見に同意する。諸邦は連邦の緊急事態を何とかするために我々を送り出した。単に我々の権限の範疇を超えるという理由で、こうした緊急事態に対応することができない案に頼ったり提案したりすることは、目的を達成するための手段を犠牲にすることである。[中略]。我が国の幸福のために我々がどのような規定を作るべきかが重要な問題である。2つの案の両方に本質的な欠陥がある。統合国家的な案にするような変更が効果的である。政府を支えるために必要となる本質的な大原理は、第1に、政府を維持できる積極的で継続的な利益である。こうした原理は、連邦政府を支えるべき諸邦には存在しない。諸邦は明らかに結託している。諸邦は絶えず全体の利益に反する内部の利益を追及する。諸邦は、連合会議の要請や計画よりも個別の負債や個別の財政計画など常に優先させている。第2に、権力欲。人間は権力を愛する。同じ見解がこの原理にも適用できる。諸邦は権限を手放そうとせず、手放した権限を連合会議に実行に移させようともせず、むしろ委ねた権限を取り戻そうとする傾向を絶えず示している。諸邦の野心的な扇動政治家は、連邦政府の統制を憎んでいることで知られている。[中略]。第3に、人民の習慣的な愛着。こうした紐帯の力はすべて邦政府に向けられている。邦主権は人民のすぐ目の前にある。人民はすぐにその庇護を享受できる。邦の手から公正が分配され、人民に政府に親しみを感じさせるあらゆる法律が施行されている。第4に、強制力は、法による強制や武力による強制だと理解される。連合会議は僅かな例を除いて法による強制を有していない。特定の諸邦では、こうした強制は辛うじて有効である。ほとんどの場合にそうした力を持つが、すべての場合に及ばない。大きな共同体において、ある程度の軍事力は絶対に必要である。今、マサチューセッツはその必要性を感じて、そのための規定を作ろうとしている。しかし、そうした武力をどのようにして諸邦に対して集団的に行使できるのか。それは不可能である。当事者間の戦争になってしまうだろう。また外国勢力は手を拱いて見ていないだろう。外国勢力が介入して混乱が広がれば、その結果は連邦の解体である。第5に、影響力。不当な政治的影響力ではなく、政府への愛着を生み出す正規の栄誉や俸給の分配を意味している。諸邦はそのほぼすべてを握っている。そして、それは諸邦が存続する限り続くだろう。強欲、野心、利害といったすべての情熱が多くの個人を支配するのを我々は見てきた。そして、すべての公人は諸邦に取り込まれてしまって、連邦政府に入って来ない。したがって、諸邦は常に連邦政府を凌駕して、どのような連合であれ本質的に不安定にしてしまう。[中略]。このようなすべての悪弊をどのようにしたら避けることができるのか。すべての強力な原理や激情を覆すことができるような権限を全体政府に与えることでのみ可能である。ニュー・ジャージー案はそのような効果をもたらすのか。いかなる実質的な救済がもたらされるのか。それどころかその機能に大きな欠陥を持っている。その規定の欠陥の中には、その他の規定の有効性を損なう欠陥さえある。直接歳入を確保する手段を連合会議に与えているが、それだけでは十分ではない。収支の均衡は諸邦の拠出金によって保たれることになるが、経験はそれに頼ることはできないことを示している。[中略]。ニュー・ジャージー案のその他の致命的な点は、小邦が強く望んでいる平等な議席配分である。人間の本質からしてそれはヴァージニアをはじめとする大邦にとって同意できないものであり、もし同意することができたとしても末永く遵守されることはないだろう。またそれは公正の理念とあらゆる人間の感情に大きな衝撃を与える。政府内部の悪い原理は、たとえその作用が緩慢であっても、徐々に政府を蝕むことになるだろう。[中略]。連合会議の権限はその設立目的を実現するために十分であるとかつて考えられていた。その間違いは今、誰の目にも明らかである。[中略]。あらゆる社会では産業が奨励され、社会は少数者と多数者に分けられる。したがって、別個の利害が生じる。債務者と債権者などが存在する。すべての権限を多数者に与えれば、多数者は少数者を抑圧するだろう。すべての権限を少数者に与えれば、少数者は多数者を抑圧するだろう。したがって、両者は、他方から互いに自身を守ることができる権限を持たなければならない。[中略]。連邦は解体しかかっているか、既に解体している。民主主義への偏愛で性急に人民を救済しようという悪弊が諸邦で蔓延している。しかし、今、人心に大きな変化が起きている。そして、人民は偏見からいずれ解放されるだろう。そして、そうなった時はいつでもヴァージニア案に満足せず、それよりさらに先に進もうとするだろう」

ハミルトンは、これまで提案されたヴァージニア案とニュー・ジャージー案に代わる第三案を提示した。いわゆるハミルトン案である。それは以下のような終身制の大統領の下での強力な連邦政府を樹立するという革新的な案である。こうしたハミルトン案は十分な賛成票を集めることはできなかったが、ヴァージニア案を穏健に見せるという副産物をもたらした。


ENSEMBLE MAN:

Bright young man…

「賢明な若者・・・」


ANOTHER ENSEMBLE MAN:

Yo, who the eff is this?

「このとんでもない奴は誰だ」


BURR:

Why do you always Say what you believe? Why do you always Say what you believe? Ev’ry proclamation guarantees Free ammunition for your enemies!

「どうして君は信じることをいつもそのまま言ってしまうんだ。どうして君は信じることをいつもそのまま言ってしまうんだ。すべての発言が敵に攻撃材料を与えてしまうのに」


解説:ハミルトンが唱えた強力な中央集権国家は多くの代表達に警戒感を抱かせた。憲法制定会議は連邦議会の議席配分方法をめぐって紛糾した。会議の進展に絶望したハミルトンは、「アメリカ帝国を分裂、無政府状態、そして、苦難から救う黄金の機会が我々の手からすり抜けるのではないかと私は恐れています」という手紙をワシントンに残して商用で会議を去ってしまった。その後、ハミルトンは会議に再び戻って憲法案に署名した。ニュー・ヨーク邦の代表の中で憲法案に署名したのはハミルトンだけである。


COMPANY:

Why do you always Say what you believe? Awww!

「どうして君は信じることをいつもそのまま言ってしまうんだ。あああ」


BURR AND MEN:

Why do you write like it’s Going out of style? Write day and night like it’s Going out of style?

「なぜ君はそんなにがむしゃらに書くのか。昼も夜もがむしゃらに書くのか」


ALL WOMEN:

Going out of style, hey! Going out of style, hey!

「がむしゃらに、がむしゃらに」


BURR AND COMPANY:

Ev’ry day you fight like it’s going out of style. Do what you do.

「毎日、君はがむしゃらに戦う」


Hamilton at Burr's doorstep.


BURR: 

Alexander?

「アレグザンダー」


HAMILTON:

Aaron Burr, sir.

「アーロン・バー、何だい」


BURR:

It’s the middle of the night.

「今は真夜中だ」


HAMILTON:

Can we confer, sir?

「何か秘密の話でもあるのか」


BURR:

Is this a legal matter?

「法律の話でもどうか」


HAMILTON:

Yes, and it’s important to me.

「ああ、それは大切なことだね」


BURR:

What do you need?

「何がいいか」


HAMILTON:

Burr, you’re a better lawyer than me.

「バー、君のほうが優秀な弁護士だぞ」


BURR:

Okay.

「そうだな」


HAMILTON:

I know I talk too much, I’m abrasive. You’re incredible in court. You’re succinct, persuasive. My client needs a strong defense. You’re the solution.

「私は喋りすぎで気に触ることもある。君は法廷での活躍は素すばらしい。簡潔で説得力がある。私の顧客には力強い弁護が必要だ。君こそ解決策だ」


BURR:

Who’s your client?

「顧客とは誰だ」


HAMILTON:

The new U.S. Constitution?

「新しい合衆国憲法のことだが」


解説:憲法制定会議が終わった後、問題となったのは憲法案が正式に批准されて成立するか否かであった。憲法案は各邦で特別に選ばれた憲法批准会議によって審議され批准の是非が投票で決定されることになった。


BURR:

No.

「おいおい」


HAMILTON:

Hear me out.

「まあ聞いてくれよ」


BURR:

No way!

「いいや」


HAMILTON:

A series of essays, anonymously published Defending the document to the public.

「憲法案を人民に向かって弁護する一連の論稿を匿名で発表するんだ」


解説:ミランダは「史実ではハミルトンが他の者たちに『ザ・フェデラリスト』の執筆を呼び掛けたことを我々は知っている。マディソンとジョン・ジェイは同意したが、ガヴァニア・モリスは断った。私はこのフィクションのシーンでハミルトンがバーに執筆を求めるようにした」と述べている。


BURR:

No one will read it.

「誰もそんなものを読まない」


HAMILTON:

I disagree.

「そうとは思わない」


BURR:

And if it fails?

「それでもしうまくいかなかったら」


HAMILTON:

Burr, that’s why we need it.

「バー、我々はどうしてそうしなくてはいけないかだ」


BURR:

The constitution’s a mess.

「憲法はむちゃくちゃだ」


HAMILTON:

So it needs amendments.

「だから修正が必要なんだ」


BURR:

It’s full of contradictions.

「矛盾だらけだな」


HAMILTON:

So is independence. We have to start somewhere.

「それが独立というものだ。我々は何でもいいからまず始めなければならない」


BURR:

No. No way.

「いいや、それはないぞ」


HAMILTON:

You’re making a mistake.

「君は間違っている」


BURR:

Good night.

「おやすみ」


HAMILTON:

Hey. What are you waiting for? What do you stall for?

「おい、君は何をぐずぐずしているんだい。何をごまかそうとしているんだい」


BURR:

What?

「何だと」


HAMILTON: 

We won the war. What was it all for? Do you support this constitution?

「我々は戦争に勝った。それですべてか。君はこの憲法を支持しないのか」


BURR:

Of course.

「もちろん支持しない」


解説: ハミルトンの問いかけに対して「もちろん支持しない」と訳出しているのはバーが憲法案反対派であったという史実に基づいている。


HAMILTON:

Then defend it.

「では私が憲法を擁護しよう」


BURR:

And what if you’re backing the wrong horse?

「どうして君は尻馬に乗ろうとしているんだ」 


HAMILTON:

Burr, we studied and we fought and we killed For the notion of a nation we now get to build. For once in your life, take a stand with pride. I don’t understand how you stand to the side.

「バー、我々は今、樹立しようとしている国家構想のために研究して戦って殺し合った。1度でもいいから誇りをもって立て。どうして君が反対側に回るのか私はわからない」


解説:実際、バーは合衆国憲法に反対する側に回っている。それはバーが憲法に強く反対するニュー・ヨーク州知事のジョージ・クリントンの派閥に属していたからである。


BURR:

I’ll keep all my plans close to my chest. I’ll wait here and see

which way the wind will blow. I’m taking my time watching the afterbirth of a nation Watching the tension grow.

「私は自分の考えを胸の中にしまっておくつもりだ。ここでしばらく風向きがどうなるか見ていよう。国が生まれた後、どうなるか見て私は時間を過ごそう。緊張が増している様子を注視しよう」


ENSEMBLE:

Wait for it, wait for it, wait…Which way the wind will blow. I’m taking my time, watching the afterbirth of a nation Watching the tension grow.

「ぼちぼちやるさ。ぼちぼちやるさ。ここでしばらく風向きがどうなるか見ていよう。国が生まれた後、どうなるか見て私は時間を過ごそう。緊張が増している様子を注視しよう」


Angelica enters, arm in arm with Hamilton.


ANGELICA:

I am sailing off to London. I’m accompanied by someone Who always pays I have found a wealthy husband who will keep me in comfort for all my days. He is not a lot of fun, but there’s no one who can match you for turn of phrase. My Alexander.

「私はロンドンへ旅立つわ。お金を出してくれる人に連れて行ってもらうの。私はずっと私が快適に暮らせるようにしてくれるお金持ちの夫を見つけたわ。彼は面白くはないけれど、あなたのように巧みに言葉を操る人はどうせいないものね。私のアレグザンダー」


解説:1783年、アンジェリカは夫とともにパリに渡って1799年までアメリカに戻ることはなかった。


HAMILTON:

Angelica.

「アンジェリカ」


ANGELICA:

Don’t forget to write.

「手紙を欠かさず書くわ」


ELIZA:

Look at where you are. Look at where you started. The fact that you’re alive is a miracle. Just stay alive, that would be enough. And if your wife could share a fraction of your time If I could grant you peace of mind Would that be enough?

「今、あなたがいる立場を考えてみて。あなたがどんな所から人生を始めたか考えてみて。生きてるだけでいいの。それだけで十分なのよ。そして、もしあなたの妻があなたの笑顔を少しでも分け合えたら、あなたの心を少しでも分け合えたら、私があなたに心の安らぎを与えられるならそれだけ十分じゃない」


BURR:

Alexander joins forces with James Madison and John Jay to write a series of essays defending the new United States Constitution, entitled The Federalist Papers. The plan was to write a total of 25 essays, the work divided evenly among the three men. In the end, they wrote 85 essays, in the span of six months. John Jay got sick after writing 5. James Madison wrote 29. Hamilton wrote the other 51.

「アレグザンダーはジェームズ・マディソンとジョン・ジェイとともに新しい合衆国憲法を擁護する一連の論稿『ザ・フェデラリスト』を書いた。最初の計画では25編書く予定であった。そして作業は3人で公平に分担する予定であった。最終的に彼らは6ヶ月で85編も書いた。ジョン・ジェイは5編書いた後に病気になった。ジェームズ・マディソンは29編書いた。ハミルトンは残りの51編書いた」


解説:『ザ・フェデラリスト』はアメリカ政治学の古典である。その詳細について拙著『ジェームズ・マディソン伝記事典』から抜粋する。

『ザ・フェデラリストThe Federalist』執筆の端緒となったのはテンチ・コックスTench Coxe (1755.5.22-1824.7.17)という人物である。コックスは9月頃に「憲法案に関する見解Remarks on the Proposed Constitution」をマディソンに送り、続けて憲法擁護の基礎となる材料を送り続けた。マディソンは憲法擁護のための論を書くことをハミルトンと協議すると約束した。その結果、ハミルトンとジェイとともにマディソンは、「プブリウスPublius」という共同名義で『ザ・フェデラリスト』を執筆することになった。

この『ザ・フェデラリスト』についてジェファソンは、「政府の諸原理に関するこれまで書かれた中で最良の注釈書である」と述べている。またマックス・ファーランドは、「憲法に関する最も重要な注釈であり、アメリカの最も偉大な本の1冊と見なすことができる」と評している。それは『ザ・フェデラリスト』が当時の時代状況にのみ限定されるものではなく、権力と自由の均衡をどのように保つのかという時代を越えた政治的課題に取り組んでいる古典だからである。

マディソンの手による最初の1篇が掲載されたのは1787年11月22日のことである。ワシントンに宛てた手紙によれば、『ザ・フェデラリスト』執筆の意義は、「人民に憲法案の利点に関する詳細な議論を示すこと」にあった。そもそも憲法制定会議は、憲法案が公表されるまで一般には、まったく新しい憲法案を考案するのではなく、単に現行の連盟規約に修正を加えるだけの集まりだと考えられていた。そのため、多くのアメリカ人は新しい憲法案についてほとんど何も知らないに等しかった。中でもニュー・ヨーク邦は根強い反対を唱える党派があり、その成功が全国的に大きな重要性を持っていた。憲法反対論者に対抗する有効な論陣を張ることが『ザ・フェデラリスト』の第1の目的であった。

最終的には『ザ・フェデラリスト』の85篇のうち少なくとも14篇、最大で26篇をマディソンが単独で執筆したと考えられている。18篇から20篇の3篇は、1786年に古代や現代の連邦制について自身でまとめた覚書やハミルトンの手による資料などを参考にしている。各篇の執筆者が誰かについて確実に判明しているのは、18篇から20篇の3篇を除き、ハミルトンによる49篇、マディソンによる14篇、ジェイによる4篇である。

※注記:チャーナウはハミルトン51篇、マディソン29篇、ジェイ5篇説を支持している。

したがって、マディソンの手によるものと確実視されているのは、10篇、14篇、そして、37篇から48篇である。その主な根拠は、ハミルトンが死の直前に書いた覚書と晩年にマディソンがワシントンの出版業者に送った一覧であるが、両者には食い違いが見られる。そのため残りの篇の著者については諸説ある。

執筆当時、マディソンは引き続き連合会議のヴァージニア代表を務めており、ハミルトンも同じく連合会議のニュー・ヨーク代表であった。多忙の故に、時間を割ける者が執筆するという形態を取った。常に締め切りに追われていたために、「新聞に掲載される前に著者以外の者が原稿を精読する時間さえほとんどなく、遂には著者自身もまったく読む時間がなかった」ほどであった。さらにヴァージニアに戻るまでの約3ヶ月の間、マディソンは『ザ・フェデラリスト』を執筆していただけではなく、諸邦の人士と書簡をやり取りして、憲法批准をめぐる動静に影響力を及ぼしている。特にエドモンド・ランドルフを説得して、その立場を憲法擁護に変えたことは後のヴァージニア邦憲法批准会議に大きな影響を与えた。

当初、『ザ・フェデラリスト』は難解であり、ニュー・ヨーク邦以外ではなかなか広まらなかったために諸邦の憲法批准会議に与えた影響は限定的であった。しかし、発表の回を重ねるにつれて『ザ・フェデラリスト』は有名になり、1788年3月12日には早くも36篇までを収めた第1巻が書籍として発刊された。それは各邦の憲法案支持者の有力な理論的基盤となった。


BURR:

How do you write Like you’re Running out of time? Write day and night Like you’re Running out of time?

「どうして君はまるで時間がないかのように書くのか。昼も夜もまるで時間がないかのように書くのか」


ALL WOMEN:

Running out of time? Running out of time? Running out of time? Running out of time? Awwww!

「時間がないのか。時間がないのか。時間がないのか。時間がないのか。あああ」


BURR AND MEN:

Ev’ry day you fight, Like you’re Running out of time Like you’re Running out of time, Are you Running out of time?

「毎日、君はまるで時間がないかのように戦っている。まるで時間がないかのように、時間がないかのように、時間がないのか」


FULL COMPANY (EXCEPT HAMILTON):

How do you write like tomorrow won’t arrive? How do you write like you need it to survive? How do you write ev’ry second you’re alive? Ev’ry second you’re alive? Ev’ry second you’re alive?

「どうして君はまるで明日が来ないかのように書くのか。どうして君はまるで生き延びるのに必死なように書くのか。どうして君はまるで刹那に生きるかのように書くのか。刹那に生きるかのように。刹那に生きるかのように書くのか」


WASHINGTON:

They are asking me to lead. I am doing the best I can To get the people that I need, I’m asking you to be my right hand man.

「彼らは私を指導者に選んだ。できる限り最善を尽くそう。必要な人々を揃えるために私は君に右腕になってもらいたい」


解説:合衆国憲法が成立した後、ワシントンが初代大統領に選ばれた。最初、ワシントンはロバート・モリスを財務長官に指名しようと考えていた。モリスは独立戦争中に連合会議の財務官として活躍した。個人的信用を供与して連合会議の財政が破綻するのを防ぎ、その貢献によって「革命の財政家」と呼ばれた。モリスという人物は、政治家であるとともにその本質は大事業家である。交易船の船主であり、製鉄業の経営者であり、土地の投機家であり、銀行の創立者であり、アメリカの政財界に顔が利くだけではなく、その名はヨーロッパにまで轟いていた。モリス以上に財務長官に適任な者はいない。

就任式に向かう途中、フィラデルフィアのモリス邸に立ち寄ったワシントンは、邸宅の主に向かって次のように言ったという。

「モリス君、財務はもちろんあなたのものだろう。革命の財政家としてのあなたの測り知れない貢献を知れば、誰も財務長官の職をあなたと争えないだろう」

モリスは、自分の事業から目を離せないとワシントンの打診を断った後、一言付け加えた。当時、モリスが手掛ける事業は傾きかかっていた。

「しかし、将軍、私が財務長官を断っても、あなたは何も失うところはありません。というのは、自分で財務長官になるよりは、はるかに賢明な人物、あなたのかつての副官であるハミルトン中佐を私は推薦できるからです」

モリスの言葉に驚いてワシントンは呟いた。

「ハミルトン中佐が優れた才能の持ち主であることは私もかねがね承知していたが、彼に財政の知識があるとはちっとも知らなかった」

「彼は何でも知っていますよ。彼のような人間にはできないことなどないのです」

この会話には別の説もあって、ワシントンがモリスに莫大な公債をどのように償還すればよいのか方策を尋ねたところ、次のようにモリスが答えたという。

「それを話せる者は合衆国にたった1人しかいません。それはアレグザンダー・ハミルトンです」

モリスは独立戦争中からハミルトンと手紙を親しくやり取りして国立銀行の構想や国家財政の問題について話し合って意気投合していた。そうした経緯からモリスがハミルトンを推薦するのは当然と言える。この男に活躍の場を与えなければ国家の損失であるとモリスは信じた。モリスの推薦に加えてマディソンもハミルトンが適任であると太鼓判を押した。後にマディソンはそれを後悔することになるが。

ただハミルトンがイギリスの政治制度を高く評価していたことはよく知られていた。そのためハミルトンは君主制主義者であるという噂が絶えなかったという問題があった。しかし、ワシントンは噂を気にすることなくハミルトンを財務長官に指名した。それだけハミルトンを信頼し、その能力を高く評価していた。

ハミルトン自身は自分が財務長官に任命されるとは思っていなかったらしい。ある日、ハミルトンは友人から「大佐、いったい誰が閣僚になるか私に教えてくれませんか」と声を掛けられた。それに対してハミルトンは、「誰が閣僚になるかあなたに教えられませんが、閣僚になりそうにない者なら教えられます。あなたの忠実な友ですよ」と答えた。「忠実な友」とはハミルトン自身である。

ハミルトンの言葉は過剰な謙遜である。ハミルトンは非常に卓越した構想力、何らかの目的のためにそれを達成する仕組みを作る力を持っていた。建国期という創造の時代にハミルトンという才人をアメリカが得たことは非常に幸運なことである。

ハミルトンの才能は豊かな知識に支えられていた。常に学ぶことを忘れず、その知識は世界各国の漁業、海運業、貿易、貨幣、製造業、鋳物業、土地、労働など多岐にわたった。1776年に発行されたばかりでアメリカではまだあまり知られていなかったアダム・スミスの『国富論』も逸早く入手して丹念に読み込んでいた。

ハミルトンは、ワシントンと同様、否、それ以上に強力な中央政府の樹立を目指してきたが、今やそれを実現できる地位に就くことができた。ハミルトンが考案した政策は、アメリカが近代国家として歩む方向を決定した最初の試みだと言える。そうした試みを成功に導くためには、憲法の原理を十分に理解したうえで現実に対応できる仕組みを作らなければならない。したがって、政治理論の知識と実務の才腕が同時に要求される。ハミルトンは両方の要求に応えることができる稀有の人材であった。


HAMILTON:

Treasury or State?

「国務長官にですか」


WASHINGTON:

I know it’s a lot to ask,

「それはもう埋まっている」


HAMILTON:

Treasury or State?

「では財務長官ですか」


WASHINGTON:

To leave behind the world you know…

「もう今までとは違うぞ・・・」


HAMILTON:

Sir, do you want me to run the Treasury or State department?

「財務省を管轄せよということですか」


WASHINGTON:

Treasury.

「財務省だ」


HAMILTON:

Let’s go.

「わかりました」


ELIZA:

Alexander…

「アレグザンダー」


HAMILTON:

I have to leave.

「行かなくては」


ELIZA:

Alexander—

「アレグザンダー」


HAMILTON:

Look around, look around at how lucky we are to be alive right now.

「周りを見てごらんなさいよ、周りを見てごらんなさいよ、私達が今、生きていることがどんなに幸運なことか」


ELIZA:

Helpless…

「どうしたらいいの・・・」


HAMILTON:

They are asking me to lead.

「彼らは私にやってほしいと言うんだ」


ELIZA:

Look around, isn’t this enough?

「周りを見てごらんなさいよ、今のままで十分じゃないの」


ANGELICA:

He will never be satisfied, He will Never be satisfied, Satisfied, Satisfied...He will Never be satisfied, Satisfied, Satisfied...

「彼は決して満足しないわ。彼は決して満足しない。満足しない。満足しない・・・彼は決して満足しないわ。満足しない。満足しない・・・」


ELIZA:

What would be enough To be Satisfied, Satisfied, Satisfied... Look around, Look around, Isn't this enough? What would be enough?

「どうすれば満足できるの。満足できるの。満足できるの。満足できるの・・・。周りを見てごらんなさいよ、周りを見てごらんなさいよ、今のままで十分じゃないの。どうすれば十分なの」


WASHINGTON:

History has its Eyes... On... You!

「歴史が君に目を向けている」


BURR:

Why do you assume you're the smartest in the room? Why do you assume you're the smartest in the room? Why do you assume you're the smartest in the room? Soon that attitude's gonna Be your doom! Why do you fight Like you're Running out of time?

「どうして君がここで一番賢いと思えるんだ。どうして君がここで一番賢いと思えるんだ。どうして君がここで一番賢いと思えるんだ。そんな態度をしているとすぐに破滅するぞ。なぜ君はまるで時間がないかのように戦うんだ」


WASHINGTON/MULLIGAN/LAURENS/LAFAYETTE:

History has its Eyes... On... You...

「歴史が君に目を向けている・・・」


ANGELICA:

Why do you fight like History has its eyes on you...

「なぜ君はまるで・・・歴史は君に目を向けている・・・」


ELIZA:

Why do you fight like History has its eyes on you...

「なぜ君はまるで・・・歴史は君に目を向けている・・・」


WASHINGTON/MULLIGAN/LAURENS/LAFAYETTE:

History has its eyes on you...

「歴史は君に目を向けている・・・」


BURR:

Why do you fight like History has its eyes on you...

「なぜ君はまるで・・・歴史は君に目を向けている・・・」


ENSEMBLE:

Stop! History has its eyes on you...

「見よ。歴史は君に目を向けている・・・」


HAMILTON:

I am not throwin' away my Shot! I am not throwin' away my Shot! I am Alexander Hamilton! I am not throwin' away My shot!

「私は諦めないぞ。私は諦めないぞ。私はアレグザンダー・ハミルトン。私は諦めないぞ」


MEN:

Just you wait!

「ああ今に見ていろよ」


FULL COMPANY:

Just you wait! Alexander Hamilton Hamilton, just you wait!

「今に見ていろよ。アレグザンダー・ハミルトン。ハミルトン、今に見ていろよ」


ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説25―What'd I Miss 和訳

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