ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説46―The World Was Wide Enough 和訳

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MALE COMPANY:

One two three four

「1、2、3、4」


FULL COMPANY (EXCEPT HAMILTON AND BURR):

Five six seven eight nine—

「5、6、7、8、9・・・」


BURR:

There are ten things you need to know.

「君が知るべきことが10個ある」


COMPANY:

Number one!

「まず一つ目」


BURR:

We rowed across the Hudson at dawn. My friend, William P. Van Ness signed on as my—

「未明、我々はハドソン川をボートで渡る。友人のウィリアム・P・ヴァン=ネスが私の介添人になることを・・・」


解説:ウィリアム・P・ヴァン=ネスはニュー・ヨークの有力な法曹家である。バーの親友であり、1800年の大統領選挙でバーに協力している。決闘場は現代と当時で地形が変わっている。詳しくはアメリカ歴史旅IV―セント・ポール教会&ハミルトンの決闘場(ニュー・ヨーク)を参照せよ。


BURR AND COMPANY:

Number two!

「二つ目」


BURR:

Hamilton arrived with his crew: Nathaniel Pendleton and a doctor that he knew.

「ハミルトンがナサニエル・ペンドルトンと知人の医者を連れて到着する」


解説:ナサニエル・ペンドルトンはヴァージニア出身の法曹家であり、ニュー・ヨーク州知事選挙の際にハミルトンとともに活動していた。


COMPANY:

Number three!

「三つ目」


BURR:

I watched Hamilton examine the terrain. I wish I could tell you what was happ’ning in his brain. This man has poisoned my political pursuits!

「私はハミルトンが地勢を書くにするのを見守る。彼の脳裏に何が浮かんだか君に伝えてみたいね。この男は私の政治的野心をだめにしたんだ」


COMPANY:

Most disputes die and no one shoots! Number four!

「争いの大部分がなくなれば、誰も撃たなくてすむ。四つ目」


BURR:

Hamilton drew first position. Looking, to the world, like a man on a mission. This is a soldier with a marksman’s ability. The doctor turned around so he could have deniability.

「ハミルトンは最初の位置を決める。とにかくそんなことをしている男を見てみよう。狙撃の腕前を持つ兵士だ。医師が[殺人ではなく決闘だという]法的否認権を持てるように確認する」


COMPANY:

Five!

「五つ目」


BURR:

Now I didn’t know this at the time, but we were—

「その時まで私は知らなかったことだが、我々は・・・」


BURR, PHILIP:

Near the same spot your son died, is that why—

「君の息子が死んだ場所の近くにいた。それは・・・」


HAMILTON:

Near the same spot my son died, is that why—

「私の息子が死んだ場所の近くにいた。それは・・・」


COMPANY:

Six!

「六つ目」


BURR:

He examined his gun with such rigor? I watched as he methodically fiddled with the trigger.

「なぜ彼はそんなに綿密に銃を調べるのか。彼が几帳面に引き金を確認するのを私は見ていた」


COMPANY:

Seven!

「七つ目」


BURR:

Confession time? Here’s what I got. My fellow soldiers’ll tell you I’m a terrible shot.

「告白の時間か。よしよしそうか。戦友たちは私がすごい腕前だと君に教えるだろう」


COMPANY:

Number eight!

「八つ目」


BURR, HAMILTON, MEN:

Your last chance to negotiate. Send in your seconds, see if they can set the record straight.

「交渉の最後の機会だ。本当にそれでいいのか介添人に確認するように」


Pendleton & Van Ness meet in the middle to speak, but it is Burr & Hamilton we see, starting at each other across the way.


BURR:

They won’t teach you this in your classes, But look it up, Hamilton was wearing his glasses. Why? If not to take deadly aim? It’s him or me, the world will never be the same, I had only one thought before the slaughter: This man will not make an orphan of my daughter.

「彼らは教室ではそんなことを君に教えてくれなかっただろう。しかし、見てみろ。ハミルトンは眼鏡をかけている。さあどうなるか。きちんと狙いをつけられないのではないか。奴と私、どちらが倒れても世界はもう同じではないだろう。私は殺人の前に一つだけ思っていることがある。この男は私の娘を孤児にしようとはしないだろう」


解説:ミランダはハミルトンが眼鏡をかけていたことについて「これは史実だ」と言っている。ミランダが言うように、確かにバーは後にハミルトンがポケットから眼鏡を取り出してかけたと述べている。またヴァン=ネスも「ハミルトン氏が『待て。この光の具合だと眼鏡が必要だ』と言った。それから彼はピストルをいろいろな方向に構えた。まるで光の具合を試すかのように。それから眼鏡をポケットから取り出してかけて、再びピストルをいろいろな方向に構えた」と記している。


COMPANY:

Number nine.

「九つ目」


BURR:

Look him in the eye, aim no higher. Summon all the courage you require. Then count:

「相手の目をよく見てあまり高く狙うな。必要な勇気を奮い起こせ。さあ数え始めるぞ」


COMPANY:

One two three four five six seven eight nine Number ten paces! Fire—

「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10歩、発砲」


Burr fires a shot. Before Hamilton is hit, the action freezes.


HAMILTON:

I imagine death so much it feels more like a memory. Is this where it gets me, on my feet, sev’ral feet ahead of me? I see it coming, do I run or fire my gun or let it be? There is no beat, no melody. Burr, my first friend, my enemy, Maybe the last face I ever see? If I throw away my shot, is this how you’ll remember me? What if this bullet is my legacy? Legacy. What is a legacy? It’s planting seeds in a garden you never get to see. I wrote some notes at the beginning of a song someone will sing for me. America, you great unfinished symphony, You sent for me. You let me make a difference. A place where even orphan immigrants can leave their fingerprints and rise up. I’m running out of time, I’m running and my time’s up. Wise up. Eyes up. I catch a glimpse of the other side. Laurens leads a soldiers’ chorus on the other side. My son is on the other side. He’s with my mother on the other side. Washington is watching from the other side. Teach me how to say goodbye. Rise up, rise up, rise up, Eliza My love, take your time. I’ll see you on the other side.

「私はまるで死を本物のように実感している。どこで死は私を捕えるのか。私のすぐ足元か数フィート先か。もし死が迫っているのを知れば、私は逃げるのか、発砲するのか、それともなすがままに任せるのか。死は前奏なしで突然、襲って来るのか。バー、私の最初の友人して敵。私が最期に見るのは彼の顔になるのか。もし私が無駄弾を撃てば、君は私をそれで覚えていてくれるのか。この銃弾は私の後世の名声になるのか。後世の名声。後世の名声とは何か。自分は見られないのに庭園に種を植えることだ。誰かが私のためにきっと歌ってくれる歌の冒頭にちょっとした言葉を添えたい。アメリカ、汝は偉大なる終わることなき交響曲。汝は私を求めてくれた。汝は私に変化をもたらしてくれた。孤児の移民でさえものし上がって足跡を残せる場所。もう私には時間がない。私の時間は尽きてしまった。しっかりしろ。上を見よ。彼岸がうっすらと見える。ローレンスが兵士たちのコーラスを彼岸でリードしている。息子は彼岸にいる。息子と一緒に私の母も一緒に彼岸にいる。ワシントンも彼岸から見ている。どのようにしてさようならを言おうか。気を確かに、気を確かに、気を確かに、イライザ。愛する人、自分の時間を大切に。君と彼岸できっと再開できるから」


解説:3—My Shotと対になっている。

「私はまるで死を本物のように実感している。いつ死は私を捕えるのか。寝ている時にか。私の7フィート先にいるのか。もし死が迫っているのを知れば、私は逃げるのか、なすがままに任せるのか。死は前奏なしで突然、襲って来るのか。ああ、20歳を過ぎて生きているとは思わない。人生がせいぜいその半分しかない者がいる場所から私は来ている。我々がなぜ生き急ぎ、笑うのか誰かに聞いてみよ。一杯飲もう。これが最後だ。もう十分だから」


Hamilton raises his pistol.


HAMILTON:

Raise a glass to freedom...

「自由に乾杯・・・」


BURR, COMPANY:

He aims his pistol at the sky.

「彼はピストルを空に向けた」


BURR:

Wait!

「おい」


Burr fires a shot. Hamilton goes down.


BURR:

I strike him, right between his ribs. I walk towards him, but I am ushered away. They row him back across the Hudson. I get a drink.

「私は彼を撃った。ちょうど肋骨の間に命中した。私は彼に向かって歩いたが離されてしまった。彼らはボートに乗せてハドソン川を渡った。私は一杯ひっかけた」


解説:ヴァン=ネスとペンドルトンは以下のような共同声明を1804年7月17日付で発表している。

バー大佐が最初に前もって約束した場所に到着した[訳注:バーは自宅のリッチモンド・ヒルからウィホーケンに午前6時30分頃到着して介添人とともに決闘場から石や枝などを取り除いた]。ハミルトン将軍が到着した時[訳注:ハミルトンは午前7時少し前に到着]、両陣営は挨拶を交わした[訳注:挨拶を交わしたのはハミルトン、バー、そして、両者の介添人の4人、漕ぎ手や医師は法的責任を問われずにすむように少し離れた場所で待機]。そして、介添人は進み出て打ち合わせをした。彼らは10歩の距離を測定した。 そして、位置とどちらが開始の合図を出すかを決めるためにくじを弾いた。その結果、ハミルトン将軍の介添人が両方を引き当てた[訳注:ハミルトンは北側の位置を選んだ]。それから彼らは互いの面前でピストルに銃弾を装填した[訳注:ピストルは二丁ともハミルトンが借りてきたものであり、フィリップの決闘に使われたものである]。その後、両陣営は配置についた。合図を出すことになった紳士は、発砲について定めた規則について両陣営に説明した。それは以下の通りである。両陣営は配置につく。合図を出す介添人は、彼らに準備ができているか確認する。肯定の答えがあれば、彼は「構え」と言う。その後、両陣営は構えて好きな時に発砲する。もし一方がもう一方が発砲する前に発砲した場合、相手側の介添人が1、2、3、撃てと言ってから発砲する[訳注:反撃の機会を与えるということ]。準備ができたかどうか聞いて肯定の答えがあれば、彼は先に定めておいた合図を出す。そして、両陣営が狙いを定めて連続して発砲する。 介添人が詳細な合意に至らなかったのでいつ中断するかは示されない[訳注:発砲を止めていつ話し合いを始めるか、もしくはさらに決闘を続けるか発砲の合間に決めるということ]。[決闘が始まって]ピストルは互いに数秒以内に発射された[訳注:バーとハミルトンのどちらが先に発砲したか両陣営は合意に至らなかったのでこうした曖昧な表現になっている。チャーナウはハミルトンが先に発砲してわざと外したのを知りながらもバーは後から発砲してハミルトンを容赦なく撃ち殺したと指摘している]。バー大佐の銃撃が命中した。ハミルトン将軍はほとんど瞬時に倒れた[訳注:銃弾は右の肋骨に命中して腹部に入って脊柱に食い込んだ。ハミルトンは医師に一言だけつぶやいて意識を失った。そして、ボートの上で意識を取り戻したが足が完全に麻痺していた]。それからバー大佐はハミルトン将軍に向かって歩き始めた。それはまるでハミルトン将軍の友人に後悔の念を示すかのようだった。しかし、何も話すことなく向き直ってその場を去った。後の話では、近づいてきた外科医とボートの漕ぎ手に姿が見られないようにしながらバーはその場から離れるように友人に促された[訳注:ヴァン=ネスがバーの顔を傘で隠して目撃されないようにした]。関係者と街に戻るバーを乗せたボートの間では、さらなるやり取りは何も起きなかった。我々は、両陣営の行動は状況に適したふさわしいものだったと考えていると付け加えたい。

バーは決闘について手紙で以下のように述べている。

ハミルトン将軍が私の性質についてずっといろいろと言いたい放題であったのはよく知られていることです。彼は捕らえ所がないやり方で不適切で攻撃的なことを言う特殊な才能を持っていました。二つの異なる機会において、彼はあまりに過激であったので私は彼に釈明する公正な機会を得ました。彼は自発的に謝罪をすることで私の気持ちを汲み取れたはずです。彼への配慮から、そして、平穏を真摯に望んでいることから私はそうした状況について詳しく言及するつもりはありませんが、私の寛大な行為が彼に何らかの影響を与えたはずだと思っています。


COMPANY:

Aaaah Aaaah Aaaah

「あああ、あああ、あああ」


BURR:

I hear wailing in the streets.

「私は街中で泣き叫ぶ声を聞いた」


解説:バーは、これまでハミルトンを「ジャコバン派(過激派)」だと忌み嫌っていた人々までハミルトンのために泣いていると手紙に書いている。


COMPANY:

Aaaah Aaaah Aaaah

「あああ、あああ、あああ」


BURR:

Somebody tells me, “You’d better hide.”

「ある者が私に『隠れたほうがいい』と言った」


COMPANY:

Aaaah Aaaah Aaaah

「あああ、あああ、あああ」


BURR:

They say

「彼らは言う」


BURR, ANGELICA:

Angelica and Eliza—

「アンジェリカとイライザは・・」


BURR:

Were both at his side when he died. Death doesn’t discriminate Between the sinners and the saints, It takes and it takes and it takes. History obliterates. In every picture it paints, It paints me and all my mistakes. When Alexander aimed At the sky, He may have been the first one to die, But I’m the one who paid for it. I survived, but I paid for it. Now I’m the villain in your history, I was too young and blind to see. I should’ve known. I should’ve known The world was wide enough for both Hamilton and me. The world was wide enough for both Hamilton and me.

「彼が死んだ時、二人とも彼のそばにいた。死は罪人も聖人も分け隔てしない。本当に本当に本当に大変なんだ。歴史は抹消される。歴史が描くすべての絵は、私と私の過ちすべてを描く。アレグザンダーが空に向けて撃った時、彼は自ら死を選んだようなものだ。しかし、私は罰を受けなければならない。私は生き残った。しかし、私は罰を受けなければならない。君たちの歴史の中で私は今や悪者さ。私は未熟で見る目がなかったんだ。私は知っておけばよかった。私は知っておけばよかった。世界がハミルトンと私の2人にとって十分に広いかを。世界がハミルトンと私の2人にとって十分に広いかを」


解説:イライザは街まですぐに駆けつけた。ただイライザがハミルトンの状態を知ったのはハミルトンが収容された家まで来た時である。イライザの精神状態を心配して誰も本当のことを教えなかったからである。アンジェリカもイライザに続いて駆けつけている。他にも憲法制定会議や連合会議にともに参加したグヴァヌア・モリスもやって来ている。

死を覚悟したハミルトンは最期の聖餐を牧師から授けられてバーに敵意を抱いていないことを誓約した。そして、1804年7月12日午後2時、天に召された。享年49才。ハミルトンが最期を迎えたバイヤード家は1835年に焼失したが、ずっとハミルトンの血の染みが残っていたという

13—Wait For Itと対になっている。

「死は罪人も聖人も分け隔てしない。本当に本当に本当に大変なんだ。我々はとにかく生き続けなければ。時に一緒に浮き、時に一緒に沈む。そして、別れもある。過ちを犯すこともある。それでも生きる理由があるならとにかく生きよう。私を愛する者がみんな死んでしまっても私はぼちぼちやるさ。ぼちぼちやるさ。ぼちぼちやるさ」


ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説47―Who Lives, Who Dies, Who Tells Your Story? 和訳

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