ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説47―Who Lives, Who Dies, Who Tells Your Story? 和訳

原文&和訳のみ解説なし⇒ミュージカル『ハミルトン』Who Lives, Who Dies, Who Tells Your Story? 和訳


WASHINGTON:

Let me tell you what I wish I’d known When I was young and dreamed of glory. You have no control:

「私が若く栄光を夢見ていた頃、知っておきたかったことを君に伝えよう。君はどうすることもできない」


WASHINGTON AND COMPANY:

Who lives, Who dies, Who tells your story?

「誰が生き、誰が死に、誰が君の話を伝えるのか」


BURR:

President Jefferson.

「ジェファソン大統領」


JEFFERSON:

I’ll give him this: His financial system is a work of genius... I couldn’t undo it if I tried. And I tried.

「私は奴をこう評価する。奴の作った財政制度は天才の仕事だ・・・。ちょっと試してみたんだが、私はそれを撤廃することができなかった。そして、私はいろいろとやってみた」


解説:ジェファソンは、ワシントン政権中に強く反対していたにもかかわらず、ハミルトンが構想した財政制度を撤廃することなく継続させた。もしハミルトンの財政制度がなければ、ジェファソンは大統領としての最大の業績であるルイジアナ購入を実現できなかっただろう。そう考えると、ジェファソンはハミルトンの財政制度から多大な恩恵を受けていると言える。


WASHINGTON, COMPANY:

Who lives, Who dies, Who tells your story?

「誰が生き、誰が死に、誰が君の話を伝えるのか」


BURR:

President Madison.

「マディソン大統領」


MADISON:

He took our country from bankruptcy to prosperity. I hate to admit it, but he doesn’t get enough credit for all the credit he gave us.

「奴はわが国を破産から救って繁栄に導いた。私はそれを認めたくないが、奴が我々に与えてくれたすべての信用に値するような評価を奴は我々から受けていない」


解説:マディソン政権期にハミルトンが創設した合衆国銀行は特許の期限切れを迎えて撤廃された。1812年戦争でマディソン政権は不安定な財政基盤のせいで戦費が調達できず難渋した。その結果、マディソンは第二合衆国銀行の創設を提案することになる。すなわちマディソン自らがハミルトンの財政制度の有効性を証明したと言える。

自らもニュー・ヨーク政界で活躍したセオドア・ローズヴェルトは、後にハミルトンについて以下のように評価している。

ハミルトンは過去のアメリカの政治家の中で最も優れた政治家であり、その時代において最も高邁で鋭敏な知性を持ち、当然ながらニュー・ヨークの連邦派の領袖になった。ハミルトンの次に置かれるのはジェイである。ジェイは心身ともに純粋で強健であり健全であった。両者はともに無政府状態に向かう急速な世の流れを警戒して見ていた。そして、両者は全力を尽くしてその流れを変えようとした。もちろん彼らは、偉大であるがゆえに、専制主義への敵意から無秩序に陥ろうとする人々の見解にくみしなかった。彼らは戦争によって生み出される暴力的な偏見にいささかも共感しなかった。特に彼らは、王党派の身柄や財産に対する報復的な法を嫌悪した。そして、彼らは、無力で不人気な王党派の擁護者を雄々しくも買って出た。彼らは、王党派に対しておこなわれた不正を止めようとし、群衆の叫びに恐れることなく立ち向かって、最終的に他の市民と同じく法の下の平等を王党派のために取り戻すことに成功した。


WASHINGTON, COMPANY:

Who lives, Who dies, Who tells your story?

「誰が生き、誰が死に、誰が君の話を伝えるのか」


ANGELICA:

Every other Founding Father story gets told. Every other Founding Father gets to grow old.

「すべての他の建国の父祖たちの話は語られている。すべての他の建国の父祖たちは老いている」


解説:主要な建国の父祖たちの中でハミルトンのように50才を前にして亡くなった者はほとんどいない。67才で亡くなったワシントンを除けば、ジェファソン(享年83)、マディソン(享年85)、バー(享年80)、ジョン・アダムズ(享年90)、モンロー(享年73)はいずれも長命で建国期における業績を自ら語る時間を多く持てた。先に亡くなったハミルトンの業績はそうした人々に覆い隠されることになった。


BURR:

And when you’re gone, who remembers your name? Who keeps your flame?

「君が去ったら誰が君の名前を覚えていてくれるのか。誰が君の炎を燃やし続けてくれるのか」


解説:炎とはケネディ大統領の墓にあるような「永遠の炎」のことを指していると考えられる。


BURR, MEN:

Who tells your story? Who tells your story?

「誰が君の話を伝えるのか。誰が君の話を伝えるのか」


 ANGELICA, WOMEN:

Who tells your story? Your story?

「誰が君の話を伝えるのか。君の話を」


Eliza enters.


WOMEN:

Eliza.

「イライザ」


ELIZA:

I put myself back in the narrative.

「私は自分でお話の中に戻るわ」


WOMEN:

Eliza.

「イライザ」


ELIZA:

I stop wasting time on tears. I live another fifty years. It’s not enough.

「涙を流して時間を無駄にしている場合じゃないの。私はそれから50年を生きた。それでも十分じゃなかったから」


解説:ハミルトンの死後も政界を支配した敵対者たちの前でイライザは孤独な戦いを開始した。ハミルトンの功業を正しく記録するための伝記の編纂である。イライザは特にモンローを激しく憎んでいた。モンローこそレノルズ事件の元凶だと信じていたからである。晩年、モンローが訪れた際に和解を拒絶している。伝記の編纂は息子のジョン・チャーチ・ハミルトンの手によって進められた。その成果は7巻の伝記として結実している。ただ残念なことにイライザはその完成を見る前に亡くなった。


COMPANY:

Eliza.

「イライザ」


ELIZA:

I interview every soldier who fought by your side.

「あなたのそばで戦ったすべての兵士たちから話を聞いたわ」


MULLIGAN, LAFAYETTE, LAURENS: 

She tells our story.

「彼女は我々の話を伝える」


ELIZA:

I try to make sense of your thousands of pages of writings. You really do write like you’re running out of—

「私は数千ページの文書からあなたの思想を理解しようとした。あなたは本当にまるで時間がないかのように書いている」


ELIZA, COMPANY:

Time.

「時間」


ELIZA:

I rely on—

「私は頼った」


ELIZA, ANGELICA:

Angelica.

「アンジェリカに」


ELIZA:

While she’s alive—

「彼女が生きている間・・・」


ELIZA, ANGELICA:

We tell your story.

「我々はあなたの話を伝える」


ELIZA:

She is buried in Trinity Church,

「彼女はトリニティ教会に葬られた」


解説:アンジェリカは1814年に亡くなってトリニティ教会に葬られた。


ELIZA, ANGELICA:

Near you.

「あなたのそばに」


ELIZA:

When I needed her most, she was right on—

「私が彼女のことを最も必要とした時、彼女はそばにいてくれた」


ELIZA, COMPANY:

Time.

「時間」


ELIZA:

And I’m still not through. I ask myself, “What would you do if you had more—

「まだ私にはわからないことがある。私は考えるの。『あなたは何ができたんだろう。もし・・・』」


ELIZA, COMPANY:

Time.

「もっと時間があれば」


ELIZA:

The Lord, in his kindness, He gives me what you always wanted. He gives me more—

「ありがたいことに、神はあなたがいつも求めていたものを私に与えてくれた。神は私に・・・」


ELIZA AND COMPANY (EXCEPT HAMILTON):

Time.

「もっと時間を」


ELIZA:

I raise funds in D. C. for the Washington Monument.

「私はワシントン記念塔を作るために資金を募ったわ」


解説:イライザはドリー・マディソンの求めに応じてワシントン記念塔の資金集めに協力している。イライザは、ハミルトンの政敵であったジェファソン、マディソン、モンローの三者を良く思っていなかったが、三者の中でもマディソンに対する敵意は薄かった。マディソン夫人はファースト・レディを務め終わった後もワシントンの社交界に影響力を持っていた。ポーク大統領の臨席で1848年7月4日に挙行された着工式にイライザはドリーとともに出席している。その席には将来の大統領であるリンカンもいた。


WASHINGTON:

She tells my story.

「彼女が私の話を伝えてくれる」


ELIZA:

I speak out against slavery. You could have done so much more if you only had—

「私は奴隷制度に反対した。あなたは奴隷制度の廃止を推進できたはずだわ。もしあなたに・・・」


ELIZA, COMPANY:

Time.

「もっと時間があれば」


ELIZA:

And when my time is up, have I done enough?

「そして、私の時間が尽きた時、私は十分に頑張ったかしら」


COMPANY (EXCEPT HAMILTON):

Will they tell your story?

「これからあなたの話を伝えてくれる人がいるかしら」


ELIZA: 

Will they tell our story?

「これからあなたの話を伝えてくれる人がいるかしら」


ELIZA:

Oh. Can I show you what I’m proudest of?

「ああ、私が何を誇りに思っているのかあなたに伝えてもよいかしら」


解説: イライザは、ハミルトンから受け取った「愛がつけた傷を除けば私の傷はすべて癒えた」と書かれた小さな封筒を終生、大事にしていたという。


COMPANY (EXCEPT HAMILTON):

The orphanage.

「孤児院」


ELIZA:

I established the first private orphanage in New York City.

「私はニュー・ヨークの街に最初の民間孤児院を作ったの」


解説:イライザは、1806年に創設されたニュー・ヨーク・シティ孤児救護院教会(Orphan Asylum Society of the City of New York)に関与している。そして、長年にわたって同会の活動を積極的に支えた。


COMPANY (EXCEPT HAMILTON):

The orphanage.

「孤児院」


ELIZA:

I help to raise hundreds of children. I get to see them growing up.

「私は数百人の子供たちを育てる支援をしたわ。私は彼らが成長するのを見守ったの」


COMPANY (EXCEPT HAMILTON):

The orphanage.

「孤児院」


ELIZA:

In their eyes I see you, Alexander. I see you every—

「孤児たちの瞳の中に私はあなたの姿を見ていたのよ、アレグザンダー。私は見ていたの。あなたの姿を・・・」


ELIZA, COMPANY (EXCEPT HAMILTON):

Time.

「いつも」


ELIZA:

And when my time is up? Have I done enough? 

「もう私の時間は尽きそうなのかしら。私は十分に頑張ったかしら」


COMPANY:

Will they tell my story?

「これからあなたの話を伝えてくれる人がいるかしら」


ELIZA: 

Will they tell your story?

「これからあなたの話を伝えてくれる人がいるかしら」


Hamilton enters.


ELIZA:

Oh, I can’t wait to see you again. It’s only a matter of—

「ああ、私は早くあなたと再会したい。それは・・・」


ELIZA, COMPANY:

Time.

「時間の問題よ」


Eliza sees Hamilton. He takes her hand and leads her to the edge of the stage. 


解説:イライザについて以下のような逸話が残っているので紹介したい。


私[ジェームズ・ウィルソン:1837-1925]は、96年もの星霜を経て銀色になった髪を持つ尊敬すべき淑女から招待を受けました。若い頃、彼女と私の代母は同じ家庭教師に教わった仲でした。2人は13歳の時に別れて、それ以後、直接会うことはありませんでした。広大な大西洋が2人の間を隔てていましたが、2人はほぼ80年にわたって文通を続けました。18歳[実際は22歳]のエリザベス・スカイラー[1757年~1854年]は、ニュー・ジャージーのモリスタウンに軍が駐留している時にワシントン夫妻と[1779年~1780年の]冬を一緒に過ごしました。多くの求婚者の中から彼女は1人の若い砲兵大尉に手と心を預けました。そして、2人はオールバニーにある彼女の父[フィリップ・スカイラー]の邸宅で結婚しました。123年前[1780年]のことです。私が訪問した時[1853年]、彼女が若い大尉と死によって分かたれてから半世紀が過ぎていましたが、総司令官と後に大佐として幕僚の1人になった彼のことを愛情を込めて話しました。彼女は、ワシントンがその時代において最も威厳を備えた人物であり、最も優れた騎手であったと述べました。1頭の駿馬に跨がった彼はいつも兵士たちを鼓舞していました。私がこの尊敬すべき女性に別れを告げようとした時、彼女は『私の若き友人よ、あなたが今、唇を付けたまさに同じ手にしばしばワシントンが唇を付けていたことを忘れないでいてくれれば嬉しく思います』と私に言いました。1年後、私はニュー・ヨークのトリニティ教会の陰の下に彼女が彼女の若い大尉の傍らに葬られたのを知りました。その若い大尉の名声はアメリカの政治家の中でも最も輝かしいものであり、世界の隅々まで響いています。彼の名前はアレグザンダー・ハミルトンです。

晩年、イライザは建国時代アメリカを知る生き証人として尊崇を受けた。そして、1854年11月9日、97才で亡くなり、ハミルトンのそばに葬られた。


COMPANY:

Will they tell your story? Who lives, who dies, who tells your story? Will they tell your story? Who lives, who dies—

「これからあなたの話を伝えてくれる人がいるかしら。誰が生き、誰が死に、誰があなたの話を伝えてくれるのか。これからあなたの話を伝えてくれる人がいるかしら。誰が生き、誰が死に・・・」


COMPANY:

Time... Time... Time...

「時の流れ・・・時の流れ・・・時の流れ・・・」


FULL COMPANY:

Who tells your story?

「誰があなたの話を伝えてくれるのか」


THE END.